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アースの皆既日食旅行記(17)

ついに皆既。月と太陽が完全に重なった。

光量は最低まで下がり、地平線にごく近い部分だけが明るい状態となる。太陽の周囲、かなり幅広い範囲で、絹のベールのような淡い光(コロナ)が美しく広がっている。

今回はiPadを地面に置き、周囲の明るさの変化をラプス映像(早回し)で録画してみたのだが、やはり皆既となった瞬間に、光度がぐっと下がるのがよく分かった。だがその数十秒後に、なんとガソリンスタンドの照明が自動的に点灯。その後の映像はいまひとつになってしまったが、明かりがつくほど暗くなるという証明にはなった。

誰も彼もが興奮していて、実感はなかったものの、気温も急激に下がったようだ。日食を意識していなければ、かなり肌寒かったのではないかと思う。

さて。

太陽が完全に隠されると、驚くなかれ、空に星々が見え始める。

今回の場合は、オリオン座など冬の夜に見える星座があったはずだ。ただし完全に真っ暗ではないので、実際に見えたのは1等星以上の明るい星のみである。太陽に近過ぎて、通常、地球からは早朝と夕方しか見ることのできない金星も見える。

理屈では理解できても、真っ昼間に空が暗くなり星が見えるという状況に、見てはいけないものを見ているような、本当に不思議な感覚に襲われる。見るのは6回目だというのに、心の片隅に恐怖すら感じる。

空に黒い太陽。まさに「原初の恐怖」と言えるかもしれない。

古代・中世の人間たちが、天変地異が起こる前触れとして皆既日食を恐れた気持ちがよく分かる。予備知識なしでこの暗闇に襲われたら、この世が終わると感じてもおかしくはない。周囲が急に暗くなり、雲かと思って空を見上げると、それまで明るく輝いていた太陽が真っ黒になっているのだから、その驚きは想像に難くない。

人類が人類になって何十万年も経ったいまでも、「日食を見てはいけない」という言い伝えをかたくなに守り、日食の日は家から一歩も出ない地域があると聞く。

一方で、国際宇宙ステーションが地球を回るこの時代に日食を予測するのは当たり前としても、すでにギリシャ時代にはかなりの精度で日食が起こる日時を予想していたらしい。

人類とはいやはや。矛盾だらけの存在だ。

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