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2012年3月7日

 スペイン語翻訳者になろう vol.238

 おはようございます。アースです。
 日本は3月決算企業が多いですが、海外は12月決算企業が多数。
 なので、2月に入ると、経済関係の翻訳をしているわたしのような
 翻訳者には、年次報告書等の仕事が舞い込みます。
 財務諸表などは、同じ会社であればだいたい毎年同じ内容なので、
 細かくて目がつぶれそ〜なことを除けば、結構コピペで済んだりする
 のですが、問題は企業幹部の美辞麗句。
 わたしのように日頃から丁寧な言葉を使いつけない人には
 これが大問題です。日本ならばさしずめ
  「株主の皆様には平素から格別のご支援を賜り、
   厚く御礼申し上げます」
 とでも始まるところ、スペイン語や英語ではそういう「マクラ」が
 まったくなかったり、原文通り訳すとやたら失礼な感じになったりして、
 途方に暮れることがあります。締めの挨拶や、業績低下で平謝りな(?)
 文章なども非常に厄介です。
 「さらばじゃ」「すまんね〜」じゃダメですし。(当たり前だ!!)
 そんなこんなで、さんざん時間をかけて書いた数行も、報告書の内容
 とはほとんど関係なかったりするわけでして、自分が株主だったら
 すっとばして「今期配当金」をまず見るのだろうなあと思うと、
 一抹の寂しさを感じるのでした。くすん。

 さて、今週はめくるめく桐野ワールドが帰って参りました。
 第234号に続く第6回です。
 その後に『嵐が丘』の翻訳者、鴻巣友季子さんのお話と懇談会の
 お知らせも載せておりますので、どうぞご覧くださいね。
 では始めましょう。

==<もくじ>===========================
  1) 「ちょくねりメソッド」で翻訳に挑戦しよう
  2) 『嵐が丘』の翻訳者、鴻巣友季子さんを迎えて、お話と懇談会
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  ※スペイン語の表記:このマガジンは比較的上級者を対象としている
   ことから、基本的にアクセントおよびティルデを入れていません。
   ただし動詞など重要な部分については入れることがあります。
   例)bajo → bajo'(動詞、三人称点過去の場合)

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┃1│ 「ちょくねりメソッド」で翻訳に挑戦しよう
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【桐野夏生の文学世界(6)】※全8回です。

◇本日の課題
En Out la violencia fisica es pura, casi sublime: los asesinatos y
violaciones no obedecen a un calculo economico o politico sino a los
dictados del deseo. Yayoi Yamamoto, madre de dos pequenos, trabaja el
turno nocturno en una planta de produccion de almuerzos con Masako,
Yoshie y Kuniko. Todas estas mujeres viven con la billetera apretada
y cuidan de hijos fantasmales y hombres a los que nunca ven.

【語注】
fisica   :物理的な、身体の
sublime  :崇高な、気高い
violacion:強姦
obedecen a...<obedecer a...:〜に従う、服従する
dictados :(良心などの)導き
turno nocturno:夜勤、夜間シフト
billetera:札入れ、財布
apretada::貧困な、きつい、金に窮した
fantasmal:幽霊の(ような)、非現実的な

【直訳】
『アウト』では物理的暴力は純粋であり、ほとんど崇高である。すなわち、殺
人や強姦は経済的または政治的な計算ではなく、欲望の導きに従う。小さな二
児の母である山本弥生は雅子、ヨシエ、邦子とともに昼食製造工場で夜勤で働
く。これらの女性たちは全員、貧しい財布とともに生きており、幽霊のような
子どもたちと男たちの世話をするが、彼らに決して目を向けない。

◇本日の課題(再掲)
En Out la violencia fisica es pura, casi sublime: los asesinatos y
violaciones no obedecen a un calculo economico o politico sino a los
dictados del deseo. Yayoi Yamamoto, madre de dos pequenos, trabaja el
turno nocturno en una planta de produccion de almuerzos con Masako,
Yoshie y Kuniko. Todas estas mujeres viven con la billetera apretada
y cuidan de hijos fantasmales y hombres a los que nunca ven.

【練り訳例1】
『アウト』では、物理的暴力は純粋なものとして描かれ、崇高ですらある。殺
人も強姦も、金銭や政治がらみの打算とは無縁で、欲望に導かれるがままに行
われる。2人の子どもの母親である山本弥生は、雅子、ヨシエ、邦子とともに
弁当工場で夜勤の仕事をしている。この女性たちは困窮した生活を送りなが
ら、手応えの感じられない子どもたちと夫の面倒を見ているが、彼らを直視す
ることはない。

【練り訳例2】
『アウト』で描かれる暴力は、「気高い」と形容できそうなほどピュアなもの
である。殺人も暴行もただ欲望の赴くままに行なわれ、そこには損得勘定も策
略めいた打算もない。2児の母である山本弥生は、雅子、ヨシエ、邦子ととも
に弁当工場で深夜のパートをしている。彼女らは厳しい台所事情のなかで、つ
かみどころのない子どもたちとまるで関心の持てない夫の世話をしている。

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┃2│ 『嵐が丘』の翻訳者、鴻巣友季子さんを迎えて、お話と懇談会
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アースとピーチが制作に加わった『スペイン語経済ビジネス用語辞典』の
編集母体であり、スペイン語教育を多角的に行なっている(有)イスパニカ
の代表者・井戸光子さんから、2003年に『嵐が丘』を新訳された翻訳家の
鴻巣友季子さんを囲む懇談会のお知らせです。

鴻巣さんは文学翻訳者さんではありますが、本メルマガの読者さんの
大部分を占めるであろう実務翻訳関係者・学習者さんにとっても、ために
なるお話がきっと聞けることと思います。ぜひ参加してみてはいかが
でしょうか。

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『嵐が丘』の翻訳者、鴻巣友季子さんを迎えて、お話と懇談会

◆なぜ翻訳は苦しく愉しいのか◆

日時:2012年3月17日(土)  14:00-16:45
場所:新橋駅前ビル1号館4階(フィルポート)
   JR新橋駅汐留口1分
   ゆりかもめ乗り場のすぐ向こうが新橋駅前ビル1号館です。

参加費:3,500円(一般)
    3,000円(イスパニカ在校生・元受講生)
定員  :80名
主催  :イスパニカ
お申し込みはイスパニカへ:hola@hispanica.org
tel. 03-3630-9711
fax. 03-3630-9717

【鴻巣友季子さんプロフィール】
翻訳家・文芸評論家・エッセイスト。英文学の翻訳をメインに活躍。2003年
『嵐が丘』新訳で注目され、またヴァージニア・ウルフ『灯台へ』でも評判と
なる。最新刊は『遅い男』(早川書房)。次の新訳は『風と共に去りぬ』。
エッセイ集『全身翻訳家』(筑摩書房)等、随筆、対談でも人気。

※『嵐が丘』を新訳された翻訳家の鴻巣友季子さんをお迎えし、訳書を世に生
 み出すまでの苦しみとよろこびをたっぷり語っていただきます。よその国、
 自分ではない他者の体験をなぞり、最終的には自分の言葉で語るのが翻訳だ
 と、鴻巣さんはいいます。だから翻訳も時代と共に変化すると。現在取り組
 んでいるのは『風と共に去りぬ』。スカーレット・オハラの言葉が現代にど
 う甦るのでしょうか?それを生みだす翻訳者の日々は? お話のあとは生ハ
 ムとワインで乾杯しながら、ゆっくりと歓談する時間をご用意しています。
 どうぞお運びください。

イスパニカ 井戸光子

大勢の方々の参加をお待ちしています!

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◆編集後記◆
ピーチです。
上記の鴻巣さんのお話し&懇談会、現在第一線で活躍中の翻訳家さんの、
翻訳こぼれ話や仕事に対する姿勢等をナマで聴くことのできる貴重な機会だと
思います(ワインと生ハムが振舞われる懇談会までついてこの価格というのも
なかなかないことではないでしょうか!?)
翻訳者を目指す方々はもちろん、すでになっている方々にも、是非お薦め
したいと思います。
三寒四温な日々ですね。まだ寒い日もちらほらありますが、皆さんお元気で
お過ごしください。 ではまた来週(@^^)/~~~

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