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2009年10月7日

 スペイン語翻訳者になろう vol.135

 おはようございます。アースです。
 先週の土曜日、わたしにとっては2回目の「調査セミナー」を
 やってまいりました。
 例によって3時間半、べらべらべらべらべらべらべらべらべら
 しゃべり続け、さすがに疲れました。受講生さんの満足度は・・
 たぶんそれなりだったのではないかなあと思います。(出席して
 いただいた方々、ありがとうございました!)
 しかし。アース&ピーチセミナーではしたことのない失態を2つ
 しました。ひとつ。コンピュータの電源をホテルに忘れました。
 PCがなければどうしようもないセミナーだったので、会社の方に
 急きょ銀座アップルストアまで買いに走っていただき、事なきを
 得ました。(もともと2つめがほしかったのでちょうどよかった
 のですが)
 ふたつ。講義中に熱が入りすぎて、水の入ったコップをひっくり
 かえし、笑いをとってしまいました。でもPCにはかかりません
 でした。ほっ。
 そんなこんなで、無事終了。最後に聞いた感想のひとつは、
 「おもしろかったです!」でした。漫談をやったつもりは
 なかったんだけどな・・。なにはともあれ、満足のいく一日と
 なりました。

 さて、きょうはコロケーションの話題2回目です。先回に引き続き、
 非常に大事なお話ですので、最後までしっかりと読んでくださいね。
 それでは始めましょう。

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┃ コロケーションに敏感になろう(後篇)
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

前回は、コロケーション(共起)、すなわち「自然な語の組み合わせ」
についてお話ししました。たとえば「将棋」と「打つ」という言葉は
「共起」しない(=「将棋を打つ」とは言わない)組み合わせでした。

そして、ふだんのわたしたちであればこうした日本語にはすぐ気がつくが、
こと翻訳となると原文に引きずられてヘンテコリンな日本語を書いてしまう、
というようなお話をしました。「そんな経験はないっ」という人は、
おそらくただの一人もいないのではないかと思います。それほど、
原文の呪縛から逃れるのは難しいものですよね。

さらに、その文章の内容(分野)について「読む/聞く」「話す/書く」
という経験があればまだいいけれども、ない場合は大変で、どれだけ
時間をおいて見直そうと「その訳文が自然なのか不自然なのかわからない」
という状態から脱することができない、ということもお話ししました。

では、そういったとき、プロの翻訳者はどうしているのでしょうか?

そうです。このメルメガで耳にタコができるほど言い続けている
「調査」です。

調査と言えば単語の意味や言い回しの調査がまず思い浮かびますが、
たとえば時事であれば、その翻訳を行う前に関連するニュースを読む、
科学であれば論文を読む、ファッションであれば関連雑誌に目を通すなど
して、頭の中に「その分野における自然な語の組み合わせ」をなんとなく
頭の中に残しておく、これも大事な事前調査の一環であると思います。

もちろん、翻訳の途中で不安になったら、自分が考えた語の組み合わせ
(もちろん訳語そのものも)が「その分野の常識に照らして自然であるか
どうか」を繰り返し調査します。ときに面倒な作業ではあるのですが、
これを怠ると、その道の専門家にとって「理解はできるが、素人が訳した
ことがバレバレ」の翻訳文ができあがってしまいます。それではプロの
仕事とは言えません。

もちろん、自分の訳文に不安がなければ調査することも思いつかないわけ
ですから、まずはコロケーションというものに対して敏感になっておく必要が
あります。自分の訳文のみならず、世の中にあふれている「変な日本語」を
探すのも、なかなか良い訓練になります。ぜひ試してみてください。

ところで、上記では「読む/聞く」「話す/書く」という経験がない場合は
大変だと書きましたが、「読む/聞くという経験しかない」分野は逆に
要注意です。

読んだり聞いたりすれば理解できるので、ついあなどりがちになる
のですが、実際に自分で書いたり話したりすることはなかなかできる
ものではありません。

たとえば野球に詳しければ、試合結果や選手の動向を伝えるニュースを
理解することは簡単ですが、同じ試合を見た新聞記者さんと同じような
記事が最初から書けるかというと、それはほぼ無理。外国語にしろ日本語に
しろ、使われている単語の意味はわかっても、それらを使ってどのように
「表現」するかということになると、そう簡単にはいきません。

また、ひとつやふたつ「それらしい」表現が浮かんでも、文章全体を通じて
「これぞプロの文章」という印象を維持するのは本当に大変なことです。
たとえばメキシコの新聞 El Economista の記事を一般読者向けに訳す
翻訳者は、本来なら日経新聞の記者さんと同じくらいの文章力が必要です。

極端に聞こえるかもしれませんが、考えてみれば当たり前のこと。それを
読む人は、「翻訳文だから、わかりにくくてもいい」とは思ってくれないから
です。(うう、自分で耳が痛い・・)

しかし新聞社に勤めたこともない我々素人さんはどうすればいい
のでしょうか?

ここで魔法の処方箋をさっと差し出せればいいのですが、ありません。
ザンネン。「一にも二にも訓練」、これしかありません。

その分野の日本語を大量にしかも丹念に読むことはもちろん、その分野の
日本語を書き写す訓練もお勧めです。もちろんPCを使ってはだめで、
できれば音読しながら手でシコシコと書き写します。「毎日15分」などと
決めるとぜったいに飽きるので(わたしだけ?)、せめて気が向いたときに
やってみましょう。

ただしこの書き写し法ですぐに効果が出るのは、特殊な(その分野独特の)
単語・表現が使われている分野だけで、ごく一般的な文章の場合は、
なかなか難しいかもしれません。それでもおそらく、長いあいだ続ければ
それなりの効果は出てくると思います。

さて、最後の方は大学受験の小論文攻略法のようになってしまいましたが、
2回にわたってお届けした「コロケーションに敏感になろう」はいかがでした
でしょうか。まずは日本語アンテナの捕捉範囲を広げ、強度を高めて、
「ヘンな日本語の組み合わせ」を敏感にかぎとるところから始めてみて
くださいね。

◆編集後記◆
ピーチです。
最近ビジネス書や自己啓発書の類にすっかり関心をなくし、
フィクションばかり読み漁っております。
「自分の生き方に迷いがなくなると、人は小説を必要としなくなる」と
いうような説をきいたことがありますが、ということは、多分わたしは生涯、
小説を最良の友として生きることになりそうだなあ。
(ちなみに図書館等は利用せず、本はすべて書店で購入してます。私の日々を
支え力を与えてくれる著者や出版社へのせめてもの感謝の印、のつもりです)

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