スペイン語翻訳者になろう vol.134
おはようございます。ピーチです。
森永卓郎氏ほどではないですが、わたしもソフトクリームが結構好きです。
先日巨大公園に行った際、「激ウマ」を謳っているソフトクリーム
スタンドが目についたので買ってみたところ、これぞ日本の正しいソフト
クリームともいうべき堂々と聳える白い山を手渡されました。
「わ〜い」と喜んで早速食べ始めたのですが、そんなに柔らかタイプでも
ないくせに、 溶けるのがそれは速いこと!
秒速1ミリで山が崩れていっているのでは、と思えるほどで、
あっという間に手はクリームまみれとなってしまいました。
あんなに大きなソフトクリームだったのに、わが食道を通過できたのは
せいぜい半量ほどだったと思います。
食べ終わって(溶かし終わって?)周囲に目を遣ると、見渡す限りの
各ベンチの下には 白いクリームの湖が・・・同志の皆さん、
苦労したのね。
それはさておき、今週は非常に大切な読み物です。
今回は前篇。次回の後篇と合わせてじっくり読んでみてくださいね。
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┃ コロケーションに敏感になろう(前篇)
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皆さんは「コロケーション」という言葉をご存じでしょうか。
スペイン語では colocacion、日本語では「共起表現」で、意味は
「同時に使われることの多い単語の(自然な)組み合わせ」です。
これでは何のことかわかりにくいので、具体例を挙げてみます。
たとえば「雨」という名詞を修飾する形容詞句としては
激しい(雨)
滝のような(雨)
篠突く(雨)
などがあります。いずれも雨が「多い」「強い」ことを表現する
言い方ですね。他にも十個や二十個はすぐに思いつきそうですが、
いまのところはこれくらいにしておきます。
さて、雨が「多い」ことをスペイン語では mucha lluvia、英語でも
much rain と言いますが、これらを直訳した「多い雨」という表現は
日本語としてどうでしょうか。
Google で検索してみると、
事故の“多い雨”の日
湿気の“多い雨”の日
などの組み合わせで出てくることがあるため、ヒット数だけは多い
のですが、lluvia が mucha であることを意味しているものはほとんど
ありません。
そう、日本語では「激しい雨が降った」「強い雨が降った」「大量の雨が
降った」とは言いますが、なぜか「多い雨が降った」とはまずいいません。
Google で調べるまでもなく、「しっくりこない」と思った方は多いのでは
ないかと思います。
なんで?と問われても、「そうは言わないから」と答えるしか
ありません。文法的には形容詞+名詞なので、正しいはずです。しかし、
同じ形容詞+名詞の「激しい雨」「強い雨」はしっくりくるのに、
「多い雨」はなぜかだめ。(「雨が多い」は大丈夫なのですが。
本稿末尾の注※も参照してください)
他にもコロケーションの例としてよく挙げられるのが、「将棋を指す」と
「囲碁を打つ」です。
将棋も囲碁も、動作としては似たようなものなのに、実は「将棋を打つ」
「囲碁を指す」とは言いません。どうしてよ!と言われても、「そういう
ものだから」としか答えられません。
これがコロケーション、すなわち「自然な語の組み合わせ」です。
単語同士の相性の良さと言ってもいいでしょう。
ふだんの私たちなら、当然ながらしごく自然なコロケーションで日本語を
書き、話しているはずです。というより、日本語のコロケーションを作り
上げているのは私たちネイティブの日本人と言ったほうがいいでしょうか
(皆が「多い雨」と言うようになれば、それが自然になるのでしょうから)。
とはいえ、こと翻訳となると、原文の構造や単語の組み合わせに気を
取られたり、辞書の訳語に縛られたりして、結果的に、出来上がった
訳文(日本語)のコロケーションがどこかおかしなものとなっている・・
というケースが少なからずあるものです(もちろん、プロの私たちだって
例外ではありません)。
ただ外国語→日本語の場合、簡単な文章であれば、時間さえおけば後で
気がつく可能性は高くなります。もともとネイティブなのですから、他人の
気持ちになって読めば、おかしな点がすぐに見えてきます。「なるべく
時間をおいて見直しをしなさい」といわれるのは、そのためです。
しかしその文章に関する知識があまりない場合、すなわちその分野の
日本語を「読む/聞く」、あるいは自分で「話す/書く」という経験が
ない場合は大変です。どれだけ時間をおいて見直そうと、「その訳文が
自然なのか不自然なのかわからない」という状態から脱することが
できないからです。
しかも、スペイン語翻訳の場合には、自分になじみのある分野の仕事が
来ることのほうが少ないと言っていいでしょう。ではプロの翻訳者は
どうしているのでしょうか?
きょうは長くなってしまったので、ここまで。
来週は私たちプロの翻訳者がこの問題をどう乗り越えているのかを
お話しします。お楽しみに!
注※
「多い雨」だけでなく、「多い本」「多い水」などもだめなので、「多い」
と「名詞」は、この順序では使われないということなのでしょう(「多い」
は英語で習った「叙述形容詞」ということですね)。これを「共起しない」
という言葉を使って説明していいのかどうかわからないのですが、違和感の
ある表現としてはとてもわかりやすかったので、今回は例として使用しまし
た。文法的な解釈はどうあれ、「ネイティブが聞いて自然な表現にするよう
努力しましょう」というのが本稿の結論です。
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◆編集後記◆
アースです。
今週末の調査セミナーに向け、準備中のアースです。
ピーチとともにセミナー業(?)を初めてから、なんだかんだで
もう7回目(講義ののべ回数で言えば9回)。そろそろ「マンネリ」の
域に入りかけたか?と思ったところが、今回は初めての英語のセミナー
ということで、また緊張を新たにしています。
リハを開始して気がついたのが、見たこともない、ラテン系だか
ゲルマン系だかもわからないような英単語の場合、発音がわからない
可能性があるということ!!!
スペイン語って、ぜんぜん知らない単語で意味がわからなくても
スラスラと読めますものねえ・・・ううう。特に今回は「調査
セミナー」で、その場でネット検索を行うので、読めない単語に
あたる可能性大。
その場しのぎでモニョモニョ発音するか、あるいはさも重要で
ないふりをして読み飛ばすか・・。
(しまった、このメルマガ読者さんからの参加もアリなのだった。
該当の方々は上記記述をただちに忘れてください!!!)
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