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2009年3月4日

 スペイン語翻訳者になろう vol.111

 おはようございます。ピーチです。
 これまで何度か予告して参りましたとおり、今号から来月にかけての
 数回にわたって
  「翻訳初心者さんのためのちょくねり練習講座」
 をお送りいたします。

 これまで当メルマガでは、上級者(プロの一歩手前にいる人)向けの
 内容をお届けすることが多く、初心者の方々向けに翻訳技術を
 指南したことはほとんどありませんでした。
 しかし、わたしたちが開発した翻訳学習法である「ちょくねりメソッド」は
 翻訳初心者の実力アップにも相当な威力を発揮する方法であると考えて
 おります。
 そこで、初心者の皆さんにもこの機会に「ちょくねり」に親しんで
 いただき、翻訳力構築の礎としていただければ・・と思い、今回の講座を
 企画しました。
 楽しく学んでいただければ幸いです。

 なお、「ちょくねりって、一体なに?」という方や、「何となくは分かる
 けれど、詳しくはどういうものだったっけ?」という方のために、
 「ちょくねりメソッドとは」という説明コーナーを冒頭に設けましたので、
 本文に入る前にぜひご一読ください。

 そして、今回の課題文は、いま日本中で一番ホットで、唯一の明るい
 話題(?)である「あのこと」についてです。馴染みがあって入りやすい
 テーマだと思いますし、文章もたった一文と「とにかく短い!」ですので、
 気軽な気持ちで挑戦してみてくださいね(「読んでくださいね」ではなく
 「挑戦してみてくださいね」と書いていることに注目!受け身の姿勢で
 「読む」にとどまらず、「自分で手を動かして訳文を作ってみる」ことを
 お勧めします。自力で訳してみない限り上達はあり得ませんので)。

 それではバモノス!

 ==<もくじ>===========================
   1) 「ちょくねりメソッド」とは
   2) 「ちょくねりメソッド」で翻訳に挑戦しよう
        〜翻訳初心者さんのためのちょくねり練習講座〜
 ==================================

  ※スペイン語の表記:このマガジンは比較的上級者を対象としている
   ことから、基本的にアクセントおよびティルデを入れていません。
   ただし動詞など重要な部分については入れることがあります。
   例)bajo → bajo'(動詞、三人称点過去の場合)

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┃1│ 「ちょくねりメソッド」とは
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「ちょくねりメソッド」とは、わたしたちアース&ピーチが開発した
翻訳学習法です。

第一段階として「多少ぎこちないところはあっても文の構造や意味を
正確に汲み取った訳文(直訳)」を作成し、第二段階においてその訳文を
「日本語として自然で読みやすい文章(練り訳)」へと進化させるという
二段階を経ることで、商品価値のある成果品の完成を目指します。

直訳と練り訳についてより詳しく定義すると、およそ以下のようになります。

◎直訳とは

スペイン語の文章を、日本語に正しく「置き換えた」もの。商品としては
不十分ながら、原文の意味は忠実に伝えていると判断できるレベルです。

したがって直訳にあたってはまず、日本語の巧拙よりも、単語の意味の
取り方や文法解釈に間違いがないかという点(一言でいえば「正確さ」)に
細心の注意を払うようにします。

また、うまい意訳がぱっと思い浮かんだとしても、それはいったん脇に
おき、あくまで「直訳」に徹することが肝心です。あえて「直訳」に徹する
ことで原文が伝えようとしている根本的な意味合いを感じ取れるはずです
(「スペイン語をスペイン語のまま理解するというイメージ」とでもいえば
わかりやすいでしょうか)。

◎練り訳とは

直訳を練りあげて作った、正確で読みやすく、体裁の整った訳文(商品
価値のある訳文)のことです。翻訳者として仕事をするためには常に
このレベルの訳文を作れるようにならなければなりません。

◎ちょくねりの例

Crece expectativa por la posible aparicion de Fidel en los actos por
el Dia del Trabajador.

【直訳】メーデーのための式典での、フィデルのありうる登場への期待が増大
している。

【練り訳】メーデーの式典にフィデルが登場するのではないかとの期待が高
まっている。

※本メルマガの第11号(2007年6月8日付)でも「ちょくねり」について
 説明していますので、よろしければそちらもご覧くださいね。
 バックナンバーはこちらです。
http://espanol-traduccion.cocolog-nifty.com/blog/2007/06/08/index.html

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┃2│ 「ちょくねりメソッド」で翻訳に挑戦しよう
┃ │  〜翻訳初心者さんのためのちょくねり練習講座〜
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【「おくりびと」(1)】

◇本日の課題
La pelicula japonesa "Departures", sobre un hombre que trabaja como
agente funerario, fue la sorpresiva ganadora del Oscar como mejor
pelicula extranjera.

【構造図】
《主部》
La pelicula japonesa "Departures", sobre un hombre que trabaja como
agente funerario,
《述部》
fue la sorpresiva ganadora del Oscar como mejor pelicula extranjera.

※修飾部分をすべて削除すると La pelicula fue la ganadora.だけになりま
 す。これがこの文章の「骨格」(もっとも基礎となる部分)です。どんなに
 長い文章でも、このような修飾部分(形容詞句や副詞句など)を削除する
 と、文章の構造がクリアになります。複雑な構造の文章を読み解きたいとき
 などに試してみてくださいね。

【語注】
agente    :代理人、仲介業者、代行業者
funerario  :葬式の
sorpresivo(a):思いがけない
ganador(a)  :勝者
Oscar    :オスカー。ここではもちろん「アカデミー賞」のこと。
mejor pelicula extranjera:最優秀外国語映画(賞)

※ agente funerario: 語注に従って訳せば「葬式の代理人、葬祭業者」など
 になりますね。しかし恐らく多くの皆さんがご存知の通り、映画「おくりび
 と」の場合の agente funerario は「納棺師」のことですので、直訳段階か
 らそう訳してしまうのがいいでしょう。

 一方、この映画の予備知識をお持ちでない方は、直訳の段階では「葬式の代
 理人」「葬祭業者」などとしても構いません。練り訳に入るときに、事実関
 係を調べて的確な訳語(この場合は「納棺師」)を当てられるようにしま
 しょう。

 なお、今回はなじみのあるテーマでしたので、「agente funerario が『納
 棺師』を指すのでは」という推測も比較的簡単だったと思いますが、通常の
 翻訳業務では「予備知識を基にした推測」が不可能なことが多いので、調査
 能力を高めることが大変重要です。

 翻訳初心者の皆さんは、今は「訳す」だけで手一杯かもしれませんが、すこ
 しずつ調査の習慣を身につけていかれることをお勧めします。

※ mejor pelicula extranjera:「最」優秀ですから、定冠詞をつけた
 la mejor〜が正確な言い方なのでしょうが、ネットで検索したところでは
 la をつけない例も多く見受けられました。

◇本日の課題(再録)
La pelicula japonesa "Departures", sobre un hombre que trabaja como
agente funerario, fue la sorpresiva ganadora del Oscar como mejor
pelicula extranjera.

【直訳】
納棺師として働く一人の男性に関する日本の映画「おくりびと」は、最優秀外
国語映画賞としてのアカデミー賞の思いがけない勝者だった。

【練り訳案1】
納棺師の男性を描いた日本映画「おくりびと」が意外にもアカデミー賞の最優
秀外国語映画賞を受賞した。

※練り訳にあたってのポイント※

1) sobre un hombre que〜の部分は、直訳では「納棺師として働く一人の男
 性に関する映画」ですが、これも「納棺師の男性を描いた映画」としたほう
 が日本語表現として自然に響きますね。他にも、「〜をテーマとした映画」
 や「〜を扱った映画」などさまざまな表現方法がありそうです。

 ただ、sobre が出てきたら常にこのように訳し直さなければならないわけで
 はなく、「歴史に関する映画」や「冤罪に関する映画」のように「関する」
 を使うのが自然な場合もあります。

 要はその文脈に合う表現や読みやすい言い回しを吟味することが肝心です。
 日頃から読書などを通じて日本語表現の引出しを増やしておくと、このよう
 な場で大いに役に立つと思います。

2) sorpresiva ganadora は直訳では「思いがけない勝者」ですが、日本語
 としては少々不自然ですね。ここでは sorpresiva を副詞的に、ganadora
 を動詞的に訳して「思いがけず勝利した」などとするのが良さそうです。

 このように、スペイン語が名詞だから日本語も名詞に、形容詞だから形容詞
 になどと品詞にこだわっているとなかなか自然な表現にはなりませんので、
 いろいろと工夫してみましょう。ただし日本語を練ることに熱中するあま
 り、訳文が原文から外れていかないように注意してください。

3) mejor pelicula extranjera について。原文には mejor と入っています
 ので、正確に訳すならば「最優秀外国語映画賞」ですが、実際の日本語の記
 事では「最優秀」という言葉を入れず、単に「外国語映画賞(部門)」とし
 ているケースも多いようです。従って下の「練り訳案2」ではそのようにし
 てみました。

☆最後に、さらに練り度の高い(高すぎる?)例もいくつか挙げておきます
 (あくまで参考訳ですので、難しいと感じる方は無視してくださって構いま
 せん)。これら以外にもいろいろと工夫ができると思いますので、皆さんも
 ぜひ挑戦してみてくださいね。

【練り訳案2】
納棺師の男性が主人公の日本映画「おくりびと」が、アカデミー賞の外国語映
画賞部門で驚きの勝利を収めた。

【練り訳案3】
納棺師として働く男性を描いた日本映画「おくりびと」が、アカデミー賞の最
優秀外国語映画賞受賞という番狂わせを演じた。

【練り訳案4】
日本映画「おくりびと」のアカデミー賞外国語映画賞の受賞は驚きをもって迎
えられた。この映画は、納棺師の男を主人公にした物語である。

◆編集後記◆
アースです。
わたしがいつも行くジムは4つの壁のうち2面がガラス張りで、外には
芝生が広がっています。鳥はもちろんのこと、ごくまれにウサギさんが
ぴょんぴょんと横切っていくこともあって、なかなか楽しいところです。
先日は、初めてキツネさんが登場しました。日が柔らかく差して春の
ような陽気の午後でしたから、浮かれ出てきたのでしょうか。
何をするでもなく、ただ座り込んで毛繕いをしたり、キョロキョロ
周りを見回したり。夜でもめったにお目にかかれないのに、じつに
珍しい光景でした。
外からジムの中をじっとのぞいて、「同じところで歩いたり走ったり、
なにやってんだろうなぁ〜人間てやつは・・」とでも考えていた
のでしょうか。意味もなく恥ずかしくなったわたしでした。

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