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2009年1月28日

 スペイン語翻訳者になろう vol.106

 おはようございます。アースです。
 都会ではインフルエンザが流行っているようですね。
 このあたりでは・・どうなんだろ。この3日間、雪に閉じこめられた
 というわけでもないですが、雪かき以外で外に出ていないので、
 世の中の流れがぜんぜんわかっていません。
 それなのに世界中のニュースに触れることができるこの不思議。
 昨日も、メキシコのカルデロン大統領が国民に向かって「共に
 難局を乗り越えよう」と呼びかけている文章を読んでいるところに
 訪問者があり、出てみると、ニコニコ顔のおじさんが「魚いらん?」。
 一瞬、異次元に入りこんだような気さえします。
 でもおかげで頭が固くならずにすんでいるのかも。おじさん感謝。
 しかし一軒一軒回ってるの?たいへんだね。
 共に難局を乗り越えましょう。

 さて、3回連続の「調査対象を見極めろ!」企画、きょうは
 最終回です。

  ※スペイン語の表記:このマガジンは比較的上級者を対象としている
   ことから、基本的にアクセントおよびティルデを入れていません。
   ただし動詞など重要な部分については入れることがあります。
   例)bajo → bajo'(動詞、三人称点過去の場合)

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┃ Web時代の翻訳術 〜調査力を磨こう〜
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【「調査対象」を認識する(3)】

先週、先々週と、「本来ならば調査しなければならないのに、辞書の
語義だけでそれらしい訳をつけて安心してしまう」ことに気をつけなければ
ならないというお話をしてきました。今週はついに解決編。

Las reservas probadas de petroleo y gas de Petrobras en Brasil
cerraron 2006 en 10.573 millones de barriles equivalentes.
De ese total, 9.000 millones de barriles eran de crudo, segun
criterios de evaluacion aceptados por los organismos fiscalizadores
del mercado de capitales de Brasil y Estados Unidos.
Petrobras es controlada por el estado brasileno, pero sus acciones
son cotizadas en las bolsas de Brasil, Nueva York, Madrid y
Buenos Aires.

のうち、直訳しただけでは意味がまったく通じない部分、

segun criterios de evaluacion aceptados por los organismos
fiscalizadores del mercado de capitales de Brasil y Estados Unidos
(直訳)ブラジルと米国の資本市場の監督組織によって受け入れられた
    評価基準によると

を、一般の日本人に通じるような訳文にするのが目標です。

さて、この記事では mercado de capitales=「証券市場」のことでした
から、それを踏まえて少し練ると、「ブラジル証券市場と米国証券市場の
監督組織が認めている評価基準によると」くらいになるでしょうか。

「証券市場の監督組織」・・・日本で言えば「証券取引等監視委員会」の
ことかな、と思うけれど、いまひとつ自信がありません。だいいち、
証券委員会と石油埋蔵量に何の関係があるのかしらん?

そうそう、すっかり忘れていましたが、ここでは「その評価基準によると、
ブラジルの石油・天然ガスの確認埋蔵量のうち、原油は90億バレル」という
ことなのでした。

半信半疑ながら、証券委員会と石油埋蔵量の関係を調べてみましょうか。

ここはブラジルと米国の証券市場の話なので、ブラジルのほうで調べても
いいのですが、米国のほうが情報量が多そうですから、そちらで調査して
みましょう。米国の場合、日本の「証券取引等監視委員会」に当たる機関は
「SEC(証券取引委員会)」です。

検索ワードはなんでも結構ですが、たとえば

証券取引委員会 sec 基準 石油

などとして Google 検索してみます。すると上から数個めに

http://tinyurl.com/6neo62

がヒット。「米証券取引委員会(SEC)は12日、上場する石油・ガス
会社に義務付けている埋蔵量開示の基準を見直す方針を表明した」と
あります。証券取引委員会は上場会社にそういう情報の提出を求めている
ということなんですね!そして記事の後ろのほうを読んでいくと、
「埋蔵量」といってもいろいろと種類があるのだということもわかりました。

ほかにも、

http://home.hiroshima-u.ac.jp/er/Rres_R.html

のようなページもありました。ずっと下のほうを見ていくと、日本語で、
各国の証券市場関連組織がそれぞれ採用している資源量・埋蔵量の報告
規定の表があります。なるほど、市場ごとに基準が変わるわけですね。

だからわざわざ、「ブラジルと米国の市場で認めている基準に従うと、
原油量はこれこれだ」と言っているわけです。仮に別の国の市場が
別の基準を採用していたら、量が微妙に変わってくるのでしょう。

これで、なぜ segun criterios de evaluacion aceptados por los
organismos fiscalizadores del mercado de capitales de Brasil y
Estados Unidos などという長たらしい説明をつけていたかが
よくわかりましたね。

そして、辞書を引いて訳しただけの「資本市場の監督組織によって
受け入れられた(評価基準)」ではまったく原文の真意が表せて
いなかったということもおわかりいただけたのではないかと思います。

この手のスペイン語には、ほんとうに毎日お目にかかるといっても
過言ではありません。それに気がつくか気がつかないか。調査するか
しないか。それによって翻訳の質は大きく変わってきます。
骨惜しみせず調査するようにしたいものです。

さて、最後に上記文章の訳例をつけておきます。これはあくまでも
「例」であって、この通りにせねばならぬということではありません。
皆さんそれぞれに工夫してみてくださいね。

【試訳】
ペトロブラス社のブラジルにおける石油・天然ガスの確認埋蔵量は、2006年末
時点で石油換算105億7300万バレルで、ブラジルと米国の証券規制当局が採用
している評価基準によると、このうち90億バレルが原油であった。ペトロブラ
ス社は国営企業だが、ブラジル、ニューヨーク、マドリード、ブエノスアイレ
スの証券市場に上場している。

※問題の organismos fiscalizadores del mercado de capitales は、ブラジ
 ルはCVM(証券委員会)、米国はSEC(証券取引委員会)にそれぞれ当
 たりますので、そのまま「ブラジルのCVMおよび米国のSECが採用して
 いる・・」などとしてもいいでしょう。上記試訳では2つをまとめ、より原
 文に近い形にしてみました。

※なお、実際にペトロブラス社が米国のSECに提出した埋蔵量報告書なども
 ネットから探し出せますので、しつこく確認したい方はやってみてくださ
 い。(もはやこれは趣味の範囲ですが)

◆編集後記◆
ピーチです。
最近新聞を広げると、まず目に飛び込んでくるのは
「減産」「リストラ」「赤字」「マイナス成長」etc...
景気の悪い話ばかりです。
先行きの見えない時代でごわす・・と誰もが異口同音に唱える中、
先日の日経新聞の紙面で、某老舗旅館の社長のこんな御言葉を見つけました。
「経営者には先見性が必要というけれど、経験から言えるのは
『先の見える経営はあり得ない』ということ。あるのは社長としての
決断と、それが正解となるように努力を続けることです」
むむむ・・・なるほどなぁ〜と唸っちまいましたわ、ワタクシ。
これをムリヤリ本メルマガバージョンになおすと、
「翻訳者としての先行き(なれるのかなれないのか、
たべていけるのかいけないのか etc...)をあれこれ憂える必要はない。
『翻訳者としてやっていく』ときめたら、あとは実現するまで
当を得た努力を続けるのみである」
とでもなるでしょうか?
・・・ァァ、良薬は口に苦し。
もちろん私にとっても、まだまだ先は長く険しいのであります。

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