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2009年1月21日

 スペイン語翻訳者になろう vol.105

 おはようございます。ピーチです。
 前号で第一回目をお送りした3回連続の骨太企画、
 無事ついてきていただけていますでしょうか?
 しんどいぞ〜と思われる方もいらっしゃるだろうとは存じますが、
 この視点を持って訳しているか否かで、成果品としての訳文の質に
 お〜っきな差がつくことになると思いますので、訳者を目指す方は
 頑張って読んでくださいね。

 では早速始めましょう。

  ※スペイン語の表記:このマガジンは比較的上級者を対象としている
   ことから、基本的にアクセントおよびティルデを入れていません。
   ただし動詞など重要な部分については入れることがあります。
   例)bajo → bajo'(動詞、三人称点過去の場合)

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【「調査対象」を認識する(2)】

先週は「本来ならば調査しなければならないのに、辞書の語義だけで
それらしい訳をつけて安心してしまう」ことに気をつけなければならない、
というお話をしました。調査の宿題を出しましたが、皆さん、調べて
いただけたでしょうか?

課題は以下でした。

Las reservas probadas de petroleo y gas de Petrobras en Brasil
cerraron 2006 en 10.573 millones de barriles equivalentes.
De ese total, 9.000 millones de barriles eran de crudo, segun
criterios de evaluacion aceptados por los organismos fiscalizadores
del mercado de capitales de Brasil y Estados Unidos.
Petrobras es controlada por el estado brasileno, pero sus acciones
son cotizadas en las bolsas de Brasil, Nueva York, Madrid y
Buenos Aires.

石油・天然ガス産業関連の文章をあまり読んだことがない人であれば、
まずは

 reservas probadas   ×立証された埋蔵量  ○確認埋蔵量
 gas          ×ガス        ○天然ガス
 Petrobras       ○ペトロブラス(ブラジル石油公社)
 barriles equivalentes ×同等バレル     ○石油換算で〜バレル

このあたりに引っかかる可能性がありそうです。×としたのはもちろん、
辞書を引いただけで訳した場合です(正解は○の訳)。

でも、この程度の言葉であれば、ふだんから新聞を読んでいれば
なんとなくわかるかもしれません。少なくとも×の訳ではまずい、
ということはわかると思います。したがって、調査の必要性を
感じる人は多いでしょう。

前から訳していくと、「ペトロブラス社のブラジルにおける石油・天然
ガスの確認埋蔵量は、2006年末時点で石油換算105億7300万バレルである。
そのうち90億バレルが原油である」。ここまではいいと思います。
(「石油換算」がわからなければ、調べてみてください)

問題はそのあとの segun criterios de evaluacion aceptados por
los organismos fiscalizadores del mercado de capitales の部分です。

まず fiscalizadores は「詮索好きな」などと辞書に載っていますけれども、
それではさすがにおかしいので、語幹が同じ言葉を探してみると、

 fiscalizar=監督する、監視する、見張る
 fiscalizacion=監督、検察、監査、査察

などが見つかります。fiscalizador は形容詞ですから、文脈から考えて
「監督の、監査の、査察の」などの候補が考えられます。

segun criterios de evaluacion は「評価基準によると」でいいでしょう。

ここまでをまとめると、たとえば「資本市場の監督組織によって受け入れ
られた(評価基準)」になります。これではちょっと稚拙な感じがする
ので、「資本市場の監督組織が認めている(評価基準)」などとしても
いいでしょう。

フム、なかなかそれっぽい?じゃあこのままでOK?

しかし。「資本市場の監督組織」って、いったいなんでしょうか?

 「資本市場を監督する組織のことでしょ」

・・確かにそうですが、具体的にはなんのこと? この文章は極めて
具体的に話が進んでいますから、ここだけいきなり抽象的になることは
ありえません。実際には、何か具体的な組織のことを指しているはずです。

とはいえ、原文では確かにそう表現しているのですから、忠実に
そう訳したくなる気持ちもわかります。しかし日本語にしてしまうと、
まるで「東京検察庁」を「東京の検察事務の管掌官庁」、「警察」を
「犯罪の捜査組織」と言っているがごとくです。

文学の翻訳であれば、そのまま訳した方がいいことも多いでしょう。
しかし実務翻訳では、そのスペイン語の雰囲気や言い回しの妙などを
気にするよりも、まずは原文の内容を正確に伝えねばなりません。
日本語では警察のことを「犯罪の捜査を行う組織」とか「治安を守る
国家組織」などと表現することはほとんどないのですから、ずばり
「警察」と訳すべきなのです。

なにしろスペイン語は言い換えが大好きな言語ですので、「見るからに
言い換え」ではなくとも、ちょっとでも変だなと思ったら、立ち止まって
「実際には何を指しているのか」を考えてみる癖をつけるといいでしょう。

さてそういうわけで今回は、この記事が表現するところの「資本市場を
監督する組織」とはなんぞやということが調査の対象になります。

さて、ここで少し脇道にそれます。

この調査では「資本市場」という言葉がもうひとつのネックになっている
のですが、これは残念ながら調査では解決しにくいかもしれません。

実はこの mercado de capitales、いわゆる経済学で言う「資本市場」の
意味では使われていません。

  ※資本市場=通常は期間1年超の資金の供給・調達が行われる市場
        (『スペイン語経済ビジネス用語辞典』より)

原文の次の文章「ペトロブラス社は国営企業だが、ブラジルやニューヨーク
などの株式市場にその株式が上場されている」がヒントになるのですが、
ここでは企業にとっての資本(=株式)が取引される場所、つまり単なる
「証券(株式)市場」の意味で使われています。

これまたスペイン語の「言い換え」癖。ここまで見事にすぱっと
言い換えられると、さすがに調査のしようがありません。ここは辞書の
語義では使ってないな、たぶん○○の意味だろうなあ・・と感じられる
ところまで経験を積むしか仕方がないようです。

さて、またもや結論に達する前に終了時間に・・来週こそ解決しますので、
お楽しみに!

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◆編集後記◆
アースです。
きょうの内容はいかがでしたか?
ほんとうに、実務翻訳者は「スペイン語の言い換え癖」に
日々悩まされているといっても過言ではありません。
つい昨日も、メキシコの鉱工業輸出に関する統計記事を
読んでいたら、Pais del Sol Naciente という表現が
出てきました。
そりゃ「日本=日出ずる国」ですし、スペイン語でも
Pais del Sol Naciente がその対訳であることは確かですが、
だからといって、よりによって鉱工業の統計記事で
この言葉を使うかなあ〜。
もう長いことスペイン語を読み続けていますが、その言い換えが
何を指しているかはわかっても、なぜ「わざわざそこで」
言い換えたがるのか、その感覚はいまだにわかりません・・。

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