« 2008年11月 | トップページ | 2009年1月 »

2008年12月

 スペイン語翻訳者になろう vol.103

   ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

      100号記念 アース&ピーチ特別座談会

      現役翻訳者が明かす、仕事の流儀
           〜我流ですけど、なにか?〜

           【後 篇】

   ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

(前回、ケーキの誘惑に負けて、対談を途中で切り上げたアースとピーチ。
後日、別のカフェに集合して対談を再開)

ピーチ(以下P):100号記念対談の後篇です。気持ちを新たに始めましょ
  う。

アース(以下E):でもまたカフェですよ。またケーキ食べるんですか?

P:といいつつ、3種類も注文したのは誰?(わたしもだけど)

E:12月はケーキを食べる月だからね、いいんです。じゃあ、ケーキが来る前
  に話を終えられるよう、早速始めましょうか?

P:そうですね。きょうで終わらないと、「前篇・中篇・後篇」の3部になっ
  てしまいますから。

  前回は「翻訳に入る前に下準備をするか」というテーマで話が終わったわ
  けですが、今回はその続きということで、いよいよ実際の翻訳の話に入っ
  ていきます。「訳す際に最初からきっちり訳すか、それとも、まずはかな
  り大雑把に訳して後で詰めるか」、この点はどうですか?

E:わたしは一度訳してしまうと後で間違いに気づきにくい方なので、どちら
  かというと初めからきっちり訳していきます。途中まで訳して最初の方が
  あまりに的外れであることに気づいた場合は、その場ですぐに戻って直し
  ます。

P:これは性格がでるのかな?万事に大雑把なわたしは「まずはざっくり訳す
  派」です。もちろん例外もありますが、多くの場合は、まず全体の試訳を
  作ってしまってから、じっくり加筆修正していく形式をとっています。で
  も、このやり方は西和翻訳をおこなう際に強く出る傾向のようで、和西の
  場合は最初の訳の段階からもう少し詰めて考えているかもしれません。な
  ぜなんだろう?たぶん原文が日本語だと、初見でかなり正しく意味をとれ
  るから、訳す際にも正確にやろうという気持ちが働くのかなあ?それはと
  もあれ、この辺のやり方は、完全に好みの問題ですよね。

E:はい、どれがいい悪いということはないと思います。どういう方法を取ろ
  うと、最終的な成果品の品質がよければ構わないわけですから。ただ、わ
  たしのようなタイプでも、ピーチさんのようなタイプでも、極端に丁寧、
  あるいは極端に雑にすることは避けたほうがいいですね。後者はもちろん
  のこと、前者でも的外れだとわかったときに無駄が多くなるし、あまり立
  派に仕上げてしまうと、こんどは間違いに気がつきにくくなりますから。

P:その通りだと思います。ところで、調査にはどのくらい時間をかけていま
  すか?アースさんといえば「調査の達人」なので、ぜひ聞いてみたい。

E:またまたもちあげちゃって。何にも出ないですよ。ってさっきジャムをあ
  げたんだっけ。えーと、根っからの調査好きなもので、時間がある限り調
  べてしまいますね。とはいえ、いま自分がやっている調査が仕事なのか趣
  味の範囲なのかという見極めはちゃんとつけていますので、時間がない場
  合はあっさり諦めることもあります。その仕事には直接関係がなくても、
  持っていたほうがいいなと思える知識であれば、仕事が終わったあとに
  ゆっくり調べることもあります。

P:それはさすがですなあ!

E:てへへ。ジャムもう1個あげる。・・・あと、調査がつかなかった場合、
  クライアントに対して不明点を明確にしたうえで「あとで結果を知らせ
  る」旨を連絡し、まずは納品してしまうこともあります(クライアントに
  よっては許可してもらえないこともあるかもしれませんが)。で、改めて
  調査だけを行うわけです。

P:それもありますね。そのように「何が不明であるか」を明示することが大
  事だと思います。不明であること(調べがつかないこと)は、大抵の場
  合、翻訳者の落ち度(実力不足や手抜き等)によるものではないのですか
  ら、うやむやにしてしまわず、正直に文字に残しておくことが必要です
  ね。それから、調査をあきらめる最後のライン、というか決め手のような
  ものはありますか?

E:う〜〜ん、そうですね、「経験」かなあ。我々の場合、辞書(スペイン語
  経済ビジネス用語辞典)の制作時に朝から晩まで調査していましたから、
  「どこまで調べてみてだめなようなら諦めたほうがいい」的な見切り感覚
  が身についているのですよね。でもネットの中身は変化が激しいので、
  ちょっとさぼったらすぐにその感覚は消えてしまうと思います。幸か不幸
  か、辞書執筆後も調査三昧の日々を送っているので、いまのところは消え
  ていませんが。

P:そうですね。「調査をもう少し続けるか、あきらめるか」を判断するのに
  必要な感覚は経験によってしか養われないものですね。調査の手法はこの
  メルマガなどを参考に学べるとしても、それ以上の感覚的な部分は、読者
  各位が日々自力で調査するなかで体得していただくしかないわけです。で
  もやっていれば、ある程度は必ず身につくものですから、あきらめないで
  ほしいですよね。

E:その通りです。

P:ところで、スペイン語の原文について、「翻訳者なら辞書をひかなくても
  さらっと理解できるんでしょ?」と言われることもありますが、実際のと
  ころどうでしょうか。

E:定期的な翻訳の際は、一日で一度もひかないこともあります。でもそれは
  極度に繰り返し要素の高い文章だからで、慣れていない分野の文章の場合
  はめちゃめちゃひきますね。

P:スペイン語の初学者ですらひかないような単語でもね。

E:そうそう。名詞だけでなく、動詞や形容詞も分野が違うと使われ方が変
  わってくるので、けっこうしつこく引きます。また、西和・和西辞書は言
 うまでもないですが、ネット辞書や国語辞典、英和、英英、英西、西西、果
 ては独仏葡などあらゆるものを駆使します。日本語では類語・反語辞典、ス
 ペイン語では用例、Dudas やコーパスなどもよく使うかなあ。

P:わたしも慣れた分野ではそれほどひかないのですが、慣れほど恐ろしいも
  のはなく、とんでもない思い違いをしていることもあります。だから、慣
  れた分野ほど慎重になるべきかもしれないとはよく感じます。

E:耳が痛いなぁ。ただ時間に追われていると、つい・・ね。その「つい」が
  最もいけないのですけれど。

P:う・・・。「つい・・・」の繰り返しで人生を送ってきた自分は、速攻で
  テーマを変えさせていただきます。訳文の見直しは何度くらいしますか?

E:わたしの場合は基本的に3度と決めてます。画面上で一度、印刷して一
  度、直しを入れてもういちど印刷して一度。できればそれぞれの間に時間
  を置いて。もっと多い回数やったほうがいいのではとの考えもあります
  が、回数を制限して、一回一回により集中した方がわたしの場合は間違い
  を見つけやすいみたいです。「もう一度見直す」という考えが頭のなかに
  あると、いい加減になりかねないので。もちろん、根本的に誤解していた
  ような部分が一箇所でもあった場合は最初からやり直しです・・。

P:「3度と決めている」のですか!それはかっこいい!(・・・何が?)。
  わたしはいきあたりばったり型なもので、見直しのスタイルも「方針な
  し」です。本能の命ずるままの回数(?)見直しを行なっております。た
  だ、和西翻訳と西和翻訳の別でいえば、西和のほうが見直し回数は多いよ
  うに感じます。それは、西和は母国語である日本語に訳すということで、
  自分にとっての「練り幅」が広く、創造的な要素が濃くなってしまう分、
  丹念に見直さないと危険!というのが理由なのかもしれません。

E:なるほど、練り職人のピーチさんならではの発想ですね。

P:練るの、好きですからね。練りに集中しているうちに時間を忘れ、いつの
  まにか朝を迎え・・たことは一度もありませんけれど。あ、そうだ、納期
  が厳しいとき、徹夜はしますか?

E:絶対しません。寝不足になるとすぐに体調に響くので。

P:わたしもです。徹夜しないとできないような仕事は受けません。

E:上に同じ。ただ、納期が極めて厳しいときは、午後9時頃寝て早朝からや
  るときがあります。そのほうが絶対に能率もあがるし品質も良くなります
  からね。朝の2時間・3時間て、能率上がりますよね。電話はないし、訪
  問客はないし。メールはピーチからしか来ないし。いまはそんなことない
  ですが、以前はネットも早朝のほうが快調だったなあ。

P:そうなんですか!ネットもご主人さまの生態に似るんですね。わたしは、
  幼児がいるという家庭環境上、夕方から夜の時間は仕事ができませんの
  で、〆切前には早朝・・というか夜中の2時台や3時台に起きて仕事をす
  ることも珍しくないです。ただ、こっそり起きだして仕事しようとした瞬
  間こどもに感づかれて泣かれ、やむなく布団に逆戻りし、「ああ、間に合
  わない」とやきもきしつつも、片手をしっかりこどもに握られているので
  脱出できない・・などということもままあります。そういうときは現状に
  逆らわず、「あとで取り戻せばいいや」と割り切ったほうがいいみたいで
  す。そのくらいフレキシブルに考えられないと、仕事と家庭の平和共存は
  不可能かもしれませんね。アースさんは仕事の繁忙期、家庭生活はどう乗
  り切っていますか?翻訳者志望の方の中には、「家族持ち翻訳者の締切前
  の生活乗り切り術」的なことに関心がある方も多いのではないかと思いま
  すが。

E:確か昨年末のメルマガ対談でもお話したように思いますが、「自分はこれ
  これで忙しいので、何日(何時)頃までいないと考えてくれ」というよう
  なことを伝えます。そうすれば家族も諦め?がつきますし、こちらも心置
  きなく仕事に集中できます。家事も手抜きできるところはごっそり手抜き
  する。使えるものは使いまくる。

P:たとえば、外食などですね。

E:そうそう。でも幼児相手だと手の抜けないところもあってたいへんですよ
  ねぇ。その点、うちなんか楽なほうですよ。

P:今はそうかもしれませんが、家庭を取り巻く環境はいつまでも同じでな
  く、ある日突然大変になることもあれば、目に見えて楽になったりもする
  ものですから、そのときどきで臨機応変に対応できるだけの心のゆとりが
  大事かもしれませんね。これまた「言うは易し」ですが。

E:そうですね。とくに在宅翻訳者は、会社勤めの人に比べて暇だとか時間に
  融通がきくとか思われてしまう部分がありますから、環境変化への柔軟性
  は求められるでしょうね。

  あ、ケーキが来ましたよ!わーい!(そわそわ)

P:今回はうまい具合に話が一段落したところでお茶が来てよかったですね。
  では100号記念の対談はここで終了とさせていただきます。

E:今年も本メルマガをご愛読いただき、まことにありがとうございました。
  31日と1月7日の2回、お正月休みをいただきまして、来年14日にまた
  お目にかかります。どうぞお元気でよいお年をお迎えください!

P:来年も楽しくためになるメルマガ作りを心がけてまいりたいと思います
  ので、ご感想やご要望などがあれば是非お寄せくださいね。
  皆様がお元気で楽しい年末年始を過ごされますことを祈っております。
  あと・・・われわれは正月太りが行き過ぎないよう注意せねばですな。

E:(ケーキをぱくつきながら無言で深くうなずく)

P&E:では、Feliz Navidad y Prospero Ano Nuevo!

|

 スペイン語翻訳者になろう vol.102

 おはようございます。ピーチです。
 最近、オバ○氏(この○に入るのは「カ」ではありません)の演説CD
 (スペイン語版) を贈っていただきました。
 開けてみるとなんとCDが6枚も!(7時間分)
 しかも "Version Abreviada" とありました・・・。
 バラクよー、どんだけ喋れば気が済むのさ〜!?
 しかし演説の名手オバ○氏の話ならば、耳を傾ける7時間も有意義な
 時間となるかもしれませんね。

 さて、今号の主役は前号に引き続き、オバ○氏とは対照的な喋りで
 独自のワールドを構築してきた「B氏」です。
 B氏の迷走するオバ○発言(この○は「マ」ではありません)も
 もうじき聞けなくなると思うと・・・せ○せ○します(この○は・・
 御想像にお任せします)

 では、さっそく藪(bush)の中へと、勇気を持って分け入って
 参りましょう。

  ※スペイン語の表記:このマガジンは比較的上級者を対象としている
   ことから、基本的にアクセントおよびティルデを入れていません。
   ただし動詞など重要な部分については入れることがあります。
   例)bajo → bajo'(動詞、三人称点過去の場合)

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃ 「ちょくねりメソッド」で翻訳に挑戦しよう
┃            〜「ブッシュ大統領」 後篇
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

◇本日の課題
George W. Bush, festival del humor

Como todo Presidente de Estados Unidos, George W. Bush ha dejado un
legado de frases para la historia de la humanidad.

En materia cientifica ha destacado mucho. Especialmente sobre la NASA.
Segun Bush, para la Agencia Especial Norteamericana "el espacio sigue
siendo de alta prioridad". Y se aventuro' a opinar sobre el planeta
rojo. Segun George Bush, en Marte "existen canales, que pensamos, es
agua. Si hay agua, eso significa que hay oxigeno. Si hay oxigeno,
significa que podemos respirar".

Tambien ha mostrado su gran preocupacion en cuanto al cambio
climatico, con una gran reflexion como "se' que los seres humanos y
los peces podran coexistir en paz".

Y sin duda, ha sido en politica exterior donde mas ha dejado su
impronta de hombre de mundo. Tras reunirse con el ex presidente de
Mexico, Vicente Fox, aseguro' que habia hablado con el para que
enviara petroleo a EE.UU., por lo que "no dependeremos del petroleo
extranjero".

Otro gran momento lo protagonizo en Brasil. Nada mas aterrizar, junto
al entonces presidente Cardoso, le pregunto', intrigado: "_Ustedes
tambien tienen negros?"

【練り訳1段落 訳例】
◎ジョージ・W・ブッシュ、ユーモアの祭典
◎ジョージ・W・ブッシュ、ユーモアの見本市
◎ジョージ・W・ブッシュ、歩くユーモア

◎歴代の米国大統領と同じく、ジョージ・W・ブッシュは人類の歴史の遺産た
る名文句を残している。

◎歴代の米大統領と同様に、ジョージ・W・ブッシュは人類史に刻まれる迷文
句の数々を残した。

【練り訳2段落 訳例】
◎科学分野、とくにNASAに関するものが際立っている。ブッシュはこう
言った。「NASAにとってはいまもこれからも宇宙が大事です」。また赤い
惑星、火星についても大胆な自説を展開した。ブッシュいわく「火星には運河
があり、それは水だと考えられています。水があるなら、酸素もある。酸素が
あるなら、息ができるということになります」だそうだ。

◎なかでも科学分野での発言は出色だ。NASAについてのエピソードを紹介
しよう。ブッシュは「宇宙は依然としてNASAの優先テーマだ」と口にして
いる。さらには、赤い惑星、すなわち火星についても大胆発言を繰り出した。
彼によれば、火星には水だと思われる運河があり、水があるなら酸素もあっ
て、それはとりもなおさず呼吸が可能ということになるらしい。

【練り訳3段落 訳例】
◎また気候変動については大きな懸念を表明し、深々と考えたすえ、こう言っ
た。「人類と魚類は平和共存できると思います」。

◎また気候変動について憂慮してみせ、「人間と魚はうまく共存できるんだ
よ」という偉大な助言を与えた。

【練り訳4段落 訳例】
◎そして、彼が洗練された人物としての印象を最もはっきりと残した分野が外
交政策であったことは間違いない。メキシコのビセンテ・フォックス元大統領
と会談した後、ブッシュはこう言った。「フォックス大統領とは、米国に石油
を送ってもらうよう話をしました。だから我が国は石油を外国に頼らなくても
よくなります」。

◎とはいえ、ブッシュの「洗練された人物像」を決定的にしたのが外交政策の
舞台上であったことには疑問の余地がない。メキシコのビセンテ・フォックス
元大統領との首脳会談後、ブッシュはこう請け合った。「フォックス大統領と
の会談で、石油を送ってもらうことになった。よって我が国は、今後石油を外
国頼みにしなくてよくなる」。

【練り訳5段落 訳例】
◎そのほかに際立っていたのがブラジルでの発言である。ブラジルに到着して
まもなく、隣にいた当時のカルドゾ大統領にブッシュは好奇心をむき出しにし
てこう尋ねた。「おたくにも黒人がいるのですか?」。

◎それ以外で圧巻だったのがブラジルでのエピソードだ。ブラジルに到着する
や否や、出迎えたカルドゾ大統領(当時)に対し、ブッシュは興味をそそられ
た風情で、「きみの国にも黒人がいるんだね?」と尋ねたのである。

※ Nada mas aterrizar, junto al entonces presidente Cardoso の部分につ
 いて。「着陸してすぐ」であること、そして junto al が「(何か・誰か
 の)隣に」の意味であることから推測すると、カルドゾ大統領がブッシュ大
 統領を空港で出迎え、2人で並んでにっこり握手でもしている場面でのエピ
 ソードでしょう。ということから、やや大胆ですが案2では上記のように
 「出迎えたカルドゾ大統領(当時)に対し」と訳してみました。

◆編集後記◆
アースです。
だいぶ前に国際宇宙ステーション(ISS)のお話をしましたよね。
つい先日、我が家の周辺地域で「月の前をISSが通過するのが見える」
という予報が出たので、例によって双眼鏡を持って待機。
「月に雁」ならぬ「月にISS」かぁ、とわくわくしていたのですが、
我が家が予報の中心地域より数キロ離れていたせいで、見られません
でした。
ISSは意外と空の低いところ(といっても上空400キロですが)を
飛ぶので、ちょっとずれるともうダメだったみたいです。
腕がしびれるのをガマンして双眼鏡をのぞきつづけた結果見られたのは、
「月にカラス」でした。とほほ・・。


|

 スペイン語翻訳者になろう vol.101

 おはようございます。アースです。
 先週お届けした100号記念の対談はいかがでしたか?
 実務翻訳の場合は守秘義務もあり、「昨日こんな会社のこんな文章を
 訳しましてね・・」とはなかなか言いにくいので、実務翻訳者の謎の
 生態、いえ仕事の実態を少しでも知っていただこうと、あのような
 対談を企画しました。
 年末号では続きをお届けする予定ですので、お楽しみに!

 さて、今週と来週は二週にわたってブッシュ大統領退任記念(?)の
 ちょくねりをお送りします。先日のポニョ版と同じように、今週は
 直訳、来週は練り訳という方式でお届けします。
 課題の中にいくつかブッシュ大統領のセリフがあり、直訳ですと
 とくにわけがわからないのですが、
 「まじめにこう言ったのか」「それで何が言いたいのか」
 「ほんとうにそう信じているのか」
 などは読者の皆さんのご想像にお任せします・・。
 本号後半ではスペイン語児童文学翻訳者である宇野和美さんの
 翻訳書についてご紹介していますので、そちらもぜひ
 ご覧くださいね。

 それでは始めましょう。


 ==<もくじ>===========================
   1) 「ちょくねりメソッド」で翻訳に挑戦しよう
   2) 宣伝コーナー
 ==================================

  ※スペイン語の表記:このマガジンは比較的上級者を対象としている
   ことから、基本的にアクセントおよびティルデを入れていません。
   ただし動詞など重要な部分については入れることがあります。
   例)bajo → bajo'(動詞、三人称点過去の場合)


┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃ 「ちょくねりメソッド」で翻訳に挑戦しよう
┃            〜「ブッシュ大統領」 前篇
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

◇本日の課題
George W. Bush, festival del humor

Como todo Presidente de Estados Unidos, George W. Bush ha dejado un
legado de frases para la historia de la humanidad.

En materia cientifica ha destacado mucho. Especialmente sobre la NASA.
Segun Bush, para la Agencia Especial Norteamericana "el espacio sigue
siendo de alta prioridad". Y se aventuro' a opinar sobre el planeta
rojo. Segun George Bush, en Marte "existen canales, que pensamos, es
agua. Si hay agua, eso significa que hay oxigeno. Si hay oxigeno,
significa que podemos respirar".

Tambien ha mostrado su gran preocupacion en cuanto al cambio
climatico, con una gran reflexion como "se' que los seres humanos y
los peces podran coexistir en paz".

Y sin duda, ha sido en politica exterior donde mas ha dejado su
impronta de hombre de mundo. Tras reunirse con el ex presidente de
Mexico, Vicente Fox, aseguro' que habia hablado con el para que
enviara petroleo a EE.UU., por lo que "no dependeremos del petroleo
extranjero".

Otro gran momento lo protagonizo en Brasil. Nada mas aterrizar, junto
al entonces presidente Cardoso, le pregunto', intrigado: "_Ustedes
tambien tienen negros?"


【語注】
legado      :遺産
ha destacado<destacar:「〜を際立たせる」。他動詞ですので通常は目的語
       を必要としますが、この場合は se ha destacado(destacarse
       =際立つ、傑出する) と同じ意味で使われていると思われま
       す。隠れた主語は前文の un legado でしょう。
de alta prioridad:優先度の高い
se aventuro'<aventurarse:+a+不定詞で「あえて〜する」
planeta rojo   :「赤い星」つまり Marte(火星)のこと
canales     :運河
en cuanto a...  :〜に関して
reflexion    :熟考
coexistir    :共存する
impronta     :跡、刻印、影響
hombre de mundo :英語の person of the world から「世慣れた人」。
protagonizo'<protagonizar:主役を演じる
Nada mas     :+不定詞で「〜するとすぐ」
intrigado<intrigar:〜の好奇心をそそる


【直訳1段落】
ジョージ・W・ブッシュ、ユーモアの祭り

どの米国大統領とも同じように、ジョージ・W・ブッシュは人類の歴史にとっ
ての文章の遺産を残した。

※ todo+無冠詞の単数名詞で「どんな〜も」の意味になります。ここは米国
 大統領ならばどの人であっても、というニュアンス。


【直訳2段落】
(遺産は)科学的な分野で非常に際立っている。とくにNASA(アメリカ航
空宇宙局)について。ブッシュによると、NASAにとって、「宇宙は優先度
の高い状態であり続ける」。そして火星についてあえて意見した。ジョージ・
ブッシュによると、火星には「運河が存在する、私たちが考えるに、それは水
である。もし水があるのなら、それは酸素があることを意味する。酸素がある
のなら、それは私たちが息ができることを示している」。

※19世紀の天文学者ローウェルさんという人はかつて、火星に黒い筋が走って
 いるのを見て、それを運河であると考えました。たぶんその話を受けての発
 言だと思います。

※ existen canales で始まる文章の構造が気になる人がいるかもしれません
 ね。Pensamos que existen canales que es agua の順序が入れ替わったの
 だろう、es の先行詞は canales だから、本来は son になるべきだな、な
 どと無理やり解釈することはできますが、こういう気楽な会話文では文法的
 にあれこれ突き詰めて考えることはあまりしない方がいいかと思います。こ
 こは全体として、直訳のようなことを言っているのだろうとざっくり捉えれ
 ばいいでしょう。


【直訳3段落】
彼はまた、「人類と魚類は平和に共存することができるだろう」などの深い熟
慮とともに、気候変動に関して大いなる懸念を示した。


【直訳4段落】
そして疑いなく、彼が世慣れた人の自分の刻印をより残したのは外交政策にお
いてであった。メキシコの前大統領ビセンテ・フォックスと会合をしたあと、
彼は、(メキシコが)米国に石油を送るようにフォックスと話をしていたこ
と、従って「我々は外国の石油に依存しなくなるだろう」ということを確言し
た。

※ enviara の主語が何か一瞬迷ってしまいますが、メキシコと考えて間違い
ないでしょう。


【直訳5段落】
彼はブラジルで、別の素晴らしい時の主役を演じた。着陸してすぐ、当時のカ
ルドゾ大統領の隣で、興味をそそられた様子でカルドゾに尋ねた。「あなた方
の国にも黒人はいるのですか?」。

※Otro gran momento lo protagonizo' の lo は Otro gran momento を受け
 ています。このように目的語が動詞より前に来るときは、その目的語をさら
 に代名詞で受けることがよくあります。つまり「彼はそれ(別の素晴らしい
 時)の主役を演じた」ということ。

※ entonces は本来は副詞ですが、形容詞的に「当時の」の意味で使われるこ
 とがあります。

※ le pregunto', intrigado の le はカルドゾ、主語はブッシュです。
 intrigado は主格補語ですので、主語の Bush が「好奇心をそそられた状態
 で(カルドゾに質問した)」ということ。


┏━┯━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃2│ 宣伝コーナー
┗━┷━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

わたしたちの知人であるスペイン語児童文学翻訳者の宇野和美さんが、
このたび二冊の訳書を刊行されましたのでご紹介します。

下で宇野さんもお書きですが、『サラミスの兵士たち』は、スペインや
スペイン語に関わる者としてはぜひ読んでおきたい一冊になりそうです。
(原書でなんていわないで、ここはぜひ宇野さんの翻訳で!)

以下、宇野和美さんからの紹介文です。

----------------------------------------------------------------------

10月に新しい訳書が2点刊行されました。


○ハビエル・セルカス著『サラミスの兵士たち』
 河出書房新社 本体価格 2000円

 スペイン内戦を舞台に、戦後世代の著者が「戦争」というものの
 本質を探った大ベストセラー小説。
 ※11月30日の日本経済新聞の書評欄に掲載されています。

 →http://tinyurl.com/5gz4ok(アマゾン書店)


○エバ・メフト文/アンドレ・レトリア絵『はしれ!カボチャ』
 小学館 本体価格 1500円

 こわい動物たちの目をごまかすため、カボチャに入ってころがって
 いくおばあさんの楽しいお話。ポルトガルのむかしばなし。

 →http://tinyurl.com/682rln(アマゾン書店)


『サラミスの兵士たち』は、21世紀のスペイン文学史に残る作品だと
思います。スペイン語にかかわる方にご一読いただければうれしいです。

                                            宇野和美

----------------------------------------------------------------------


◆編集後記◆
ピーチです。
今回のB氏の記事はいかかでしたか?
日本のオバ○タレントとはケタ違いのスケールのトンデモ発言の数々、
楽しんでいただけたでしょうか。
話は変わりますが、先日のことです。
メガネをかけると、なぜか頭がぐるぐる回って
気持ちが悪くなるので
「いったい、なぜだろう?」
と思い続けていたところ、何かの拍子に
レンズ部に手が触れて気がつきました。
じつは片方のレンズが外れていたことに・・。
つまり左視力1.2、右視力0.1の世界で生きていたわけで、
そりゃ、気持ちも悪くなるというものです。
そんなオバ○の私ですらまだまだ辿り着けない
高みにいらっしゃるようだなぁ・・・B氏は。
(あ!○に入る文字は「マ」ではありませんので。念のため・・って当然か。)

|

 スペイン語翻訳者になろう vol.100

   ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

      100号記念 アース&ピーチ特別座談会

      現役翻訳者が明かす、仕事の流儀
           〜我流ですけど、なにか?〜

           【前 篇】

   ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

(対談のためにわざわざ某田舎から上京してきたアースをねぎらい、
都心の某カフェで、シブーストとアールグレイを前にしながら・・・)

ピーチ(以下P):2007年4月に創刊したこのメルマガも今号でついに100号を
  数えました!今回は読者の皆様への感謝の気持ちを込めて、アースとピー
  チの特別座談会をお送りしたいと思います。タイトルは
   「現役翻訳者が明かす仕事の流儀 〜我流ですけど、なにか?〜」
  です。

アース(以下E):なんですか?その最後のけったいなつけ足し部分は。

P:翻訳者が100人いれば100通りの仕事の仕方があっておかしくないわけです
  から、「これはあくまで私たちのやり方ですので、こうしなくてはならな
  いとは思わないでね」という気持ちを込めてみました。

E:なるほど。ま、そうですよね。ではさっそく始めましょうか。仕事の流
  儀・・って非常に漠然としたテーマですね。

P:わかりやすいように、実際の仕事の行程に沿って話を進めていくのはどう
  でしょう。

E:いいですね。

P:それでは、まずは「来た仕事はすべて受けるか?」という点から入りま
  しょうか。アースさんはどうされていますか?

E:基本的には受けています。スペイン語は英語等と違って案件の絶対量が少
  ないですから、分野を選ばない「何でも屋」でないと続けていくことは難
  しいですよね。ただ滅多にないことではありますが、依頼がいくつか重
  なったときには、それぞれの内容と量と納期とをよく考え合わせて、どれ
  を優先するかを決め、一部を断ることもあります。

P:私も基本的には分野を選ばずに受けます。もっともまるっきり自信のない
  分野の場合は、原稿を見せてもらい、可能かどうかを冷静に見極めてから
  返事しますね。一定以上のクオリティの成果品を出せそうもないものまで
  安易に受けてしまうと、信頼を失いかねませんので。できそうもないもの
  は「できません」という勇気も大切だと思います。

E:もっとも、断ってばかりいたら力はつかないですけれどね。それに、初見
  では「これは超難物だ!」と感じたものでも、丁寧に読み解いていった
  り、しつこく調査したりすると、案外道筋が見えてくるものだから、簡単
  には諦めたくないですよね。

P:それはそうです。つまり、原稿をざっと見た段階で、しつこくやればなん
  とかなるものなのか、あるいはどうにも手に負えないものなのかを見極め
  る目が必要ということだと思います。慣れてくるとその見極めが短時間で
  できるようになります。もちろん見誤って大変な思いをすることもありま
  すが、それは長い目で見て必要な失敗だと思って割り切るしかないです
  ね。

E:同感です。この点に関連して補足すると、いちおう引き受けて翻訳を開始
  したけれど、途中で「どう考えても納期には間に合わない」ことが判明し
  た場合は、すぐにクライアント側に連絡すべきですね。クライアントが与
  えてくれた納期が妥当なものとは限りませんし。

P:はい。あと「内容的に手に負えない」ことが分かった時などもそうです
  ね。いずれの場合も、その手の連絡はできるだけ早急にしないと、相手に
  迷惑をかけてしまうので十分気をつけるべきでしょう。ところで、勤勉な
  アースさんですから、納期を延ばしてもらうことなんてめったにないで
  しょう?

E:別に勤勉だからというわけではないですけれど、小心者なので、それはま
  ずないです。逆に、「明日までにお願いします」といわれて、「いえ、今
  日中にやっちゃいます」と答えることはあります。

P:おお〜!さすが夏休みの宿題を7月中に片付けていた過去を持つ御仁です
  な。一方ピーチがどうであるか・・・

E:それ、聞きたい!

P:・・・は忘れて、次の点に移りましょうか。

E:ええ〜。ぶつぶつ・・

P:「仕事を受けた後、原稿を印刷するかどうか」。これはどうですか?

E:定期的な仕事等で相当慣れているものは印刷しません。画面上ではどうし
  ても把握しにくいグラフとか表とか、そういうものはプリントすることも
  ありますが。ただ、ルーティンの仕事でなければ、基本的には印刷はした
  ほうがいいですよね。

P:私は必ず印刷します。アースさんと違い、基本的にルーティンの仕事とい
  うものがなく、来るのは毎回新規案件であるからです。

E:なるほど。あと、私の場合、ファクスで原稿が来る仕事の場合は、最初か
  ら文字が消えてしまいそうなことがあります。そういうときはすぐにス
  キャンするようにしています。うちのファクス、まだ感熱紙なんで。

P:そうなんですか!? IT普及度の高いアース家とは思えませんね。買い替
  える予定はないのですか?

E:前に買い替えたときにすでに普通紙ファクスはあったのですが、あえて感
  熱紙にしました。オートカッターもありません。だから昨日届いた10枚の
  原稿もラーメン状態で、ハサミでちょきちょき切ったという・・(笑)。
  翻訳原稿って、基本的には訳し終わったら廃棄が義務づけられているもの
  が多いですよね。だから長くとっておけなくてもいいんです。

P:なるほど。で、印刷なり、スキャンなりした後ですが、「訳し出す前に原
  文全部読むか」。これはどうですか?

E:定期的な仕事で慣れているものは、タイトルだけ見ていきなり訳しちゃう
  こともあります。でもそれができるのは、報道文の翻訳だからかもしれま
  せん。単発の仕事の場合は、やっぱり最初から最後まできっちり読んでか
  ら翻訳に移ります。ただ、「読む」といっても、ふか〜く読み込むわけで
  はなく、だいたいの流れをつかむだけですが。

P:そうですね。その話がどういう結論になっているか、その結論に至るまで
  にどのように話が展開していくか、ということの大雑把な把握のためです
  ね。また、どのあたりが翻訳しづらそうか(逆に楽そうなのはどこか)を
  見極める目的もあります。和西翻訳も行なっているんですが、和西の場合
  は原文が日本語であり、スペイン語にくらべてずっと楽に意味がとれます
  ので、全文に目を通す確率がより高いです。その初読みの段階で、キー
  ワードとなりそうな言葉や表現について、どのスペイン語をつかうかの候
  補が大体頭の中で絞られてきます。そのひと手間があると、あとで行う実
  際の翻訳がかなり楽になるんです。

E:なるほど。最後のほうで「この言い回しにしておけば良かった!」と気づ
  いて、改めて最初から直すのってたいへんですものね。あとは西和にしろ
  和西にしろ、訳す前に調査した方が良さそうなところを把握するという意
  味もありますよね。あるいは事前に文献やネットの文章を読むべき箇所を
  探すとか。それに関連して「翻訳に入る前に下準備をするか」という点は
  どうですか?

P:分野にもよりますが、最初に原文全体をざっと読んだときに目についたよ
  くわからないキーワードを調べるくらいのことはします。

E:私もほぼ同様です。分野によっては、日本語で書かれた同じ分野の文章を
  ネットなどで探し出してある程度読んでから翻訳にとりかかることもあり
  ます。日本語を読むことで、その分野特有の言い回しや基本的な考え方、
  これまでの背景などの「土台」を頭の中に作っておくわけです。

P:それは大変役に立つ「下準備」ですね。私も自信のない分野の場合は似た
  ことをしています。

E:ところで、そろそろお茶にしません?さっきから目の前にあるこのケーキ
  が気になっているんですけれど。

P:おっと、そうですね。格調高い話に夢中になってお茶の冷めるのも忘れて
  いました。通常「断然、花より団子!」の私たちとしたことが、こんなこ
  とではいかんざき!(古!)

E:では、続きは別の機会に、ということで。

P:はい、この座談会の後編は、クリスマスプレゼントとして12月24日号にて
  お送りする予定です。

E:どうぞお楽しみに!さて、ケーキケーキ♪。(むしゃむしゃ)

P:では、今回はこれにて録音を切らせていただきます。(ブチッ)

|

« 2008年11月 | トップページ | 2009年1月 »