スペイン語翻訳者になろう vol.074
おはようございます。アースです。
さわやかなお天気が続いていますね。最近のわたしの興味は
うちの庭にモグラさんが何匹いるか。我が家は毎年、チューリップを
100球以上植えるのですが、そのうち、昨年秋に新たに買った球根
からまったく芽が出ず、すべてモグラさんに食べられたもよう。
チューリップの球根は甘くておいしいらしいので、ちょっと
くやしいです(くやしがるとこはそこ?)。
さて、先週の1周年記念号で、私たちアース&ピーチ共著の翻訳解説書
発売についてお知らせしたところ、メルマガ配信直後から注文が殺到!
・・・はしませんでしたが、予想以上の反応をいただいております。
お買い上げいただいた皆様、ありがとうございます!
まだ迷っているそこのあなた、セミナーと違って申込み締切は
ありませんし、紙の本と違って絶版もありませんので、
どうぞゆっくりご検討下さいね。
それではさっそく本題に入っていきましょう。
☆ ☆ ☆
今週号と来週号はいつもの「ちょくねりメソッドで翻訳に挑戦しよう」を
お届けいたします。すぐ、いつもとちょっと違うぞ?ということに気づいて
いただけると思います。進め方も違いますし、解説が通常に比べて「かなり」
詳しくなっております。
じつは今回のちょくねりコーナー、上述の
『スペイン語実務翻訳講座
〜ちょくねりメソッドで確かな翻訳力をつけよう』
の構成に沿って作ってみました。
それにより、この教材の雰囲気や特長をより具体的にわかっていただける
のではないかと考えたのです。もちろんこの「ちょくねりコーナー」に
くらべて、教材のほうが課題文も長いですし、課題の難易度も高めなので、
解説はより充実しています。
が、「大体こんな感じです」ということが分かっていただければと思います。
いかがでしょうか?
ちょっとでも『スペイン語実務翻訳講座』に興味を持たれた方は、
→http://pie.vc/textbook/index.html
へどうぞ!!!
今週と来週は、同じ課題文を使用します。今週は「直訳」、来週は
「練り訳」です。直訳・練り訳ともに、解説を見る前にまずご自分で
訳してみることをお勧めします。
※スペイン語の表記:このマガジンは比較的上級者を対象としている
ことから、基本的にアクセントおよびティルデを入れていません。
ただし動詞など重要な部分については入れることがあります。
例)bajo → bajo'(動詞、三人称点過去の場合)
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┃ 「ちょくねりメソッド」で翻訳に挑戦しよう
┃ 〜教材発売記念バージョン〜
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【課題文】
La llama olimpica fue escoltada en todo momento por la policia
australiana, mientras tres guardas chinos que habitualmente
la acompan~an se quedaron en la retaguardia y no tuvieron que
intervenir en ningun momento para garantizar el desarrollo pacifico
de los relevos. (EFE)
原文→http://www.terra.com/deportes/articulo/html/fox575319.htm
(課題文は3段落目)
【構造図】
La llama olimpica fue escoltada
en todo momento
por la policia australiana,
mientras
tres guardas chinos que habitualmente la acompan~an
(1) se quedaron en la retaguardia y
(2) no tuvieron que intervenir
en ningun momento
para garantizar el desarrollo pacifico de los relevos.
※(1)と(2)が並列
【直訳例】
聖火は、いかなるときにもオーストラリアの警察によって護衛された。その
間、いつも聖火に同行している3人の中国人警備員は背後にとどまり、リレー
の平和な進展を保証するために介入する必要はいかなるときにもなかった。
【解説】
●この記事の全文は以下のサイトに載っていますので、できればこの前の部分
を読んでから課題文の直訳にとりかかることをお勧めします。
(http://www.terra.com/deportes/articulo/html/fox575319.htm)
●記事を最初から読めばわかるのですが、La llama olimpica は antorcha
olimpica を受けていますので、直訳段階でも「オリンピックの火」ではな
く「聖火」としてしまって良いでしょう。もし前に antorcha olimpica が
なくても、ここでは明らかに「聖火」のことですから、直訳であっても
「オリンピックの炎」としないほうがよいでしょう。
●この文章は mientras を挟んで大きく2つに分かれており、内容が前後で対
照的になっていることがわかります。もっとも分かりやすいのが en todo
momento と en ningun momento の対比ですね。少なくとも直訳段階で
は、その対比がわかるように訳すとおもしろいと思います。
●la policia は女性形なので、「(組織としての)警察」と「女性警察官」
の2つの可能性があります。が、聖火を警護する警察官がひとりだったはず
はありませんから、ここでは明らかに「(オーストラリア)警察」のこと。
もし「男性警察官」ならば el policia になります。
●tres guardas chinos que habitualmente la acompan~an の acompan~an
が現在形であることに気がついたでしょうか。他の動詞はすべて点過去なの
に、ここだけ現在形ですね。その理由を解明するカギは habitualmente に
あります。
habitualmente=「習慣的」という意味ですから、「聖火リレーが行われる
ときは常に(警備員が)それにつきそう」というニュアンスです。
habitualmente はたとえば
En 2000 la mitad de los internautas usaban habitualmente
la banca por Internet.
2000年時点では、ネットユーザーの半数がネットバンキングを
常用していた。
のように、その時点に習慣となっていることを言う場合に使われますよね。
この例の場合は2000年時点のことなので線過去ですが、今回の聖火リレーの
場合は、まさに「現在」の話。
すなわち、聖火がギリシャを出てからこの時点(オーストラリアでの聖火リ
レー時)まで guardas chinos が常時同行してきていたし、今後も、聖火が
北京に到達するまで同行し続けるため(つまりまさに「今の習慣」)、現在
形をつかうのが最適ということです。
●tres guardas chinos que habitualmente la acompan~an にはもうひとつ
問題があります。la が何を受けているかということです。これより前に出
てくる女性名詞は La llama olimpica と la policia australiana なの
で、そのどちらか。文法的にはどちらの可能性もありますが、文脈から考え
れば当然、前者ですよね。
ここの場合はほぼ問題なく正解に行き着けると思いますが、もっと複雑な文
章の場合は、文脈をしっかり把握していないと簡単に間違えてしまいますの
で気をつけましょう。
●se quedaron en la retaguardia の quedarse は「〜の状態になる」の意味
でよく使われますので、うっかりそちらにしてしまいそうですが、ここでは
原義ともいえる「〜にとどまる、居残る」の意味。
また retaguardia を辞書で引きますと「《軍事》後衛、銃後」(白水社
『現代スペイン語辞典』)などといかにも大げさですが、要するに、「とく
に混乱が起きなかったので出番がなく、オーストラリア警察に護衛を任せて
いた」ということでしょう。
●para garantizar el desarrollo pacifico de los relevos を、直訳だから
といってうっかり「リレーの平和な発展を保証するために」と訳してしまわ
ないように注意しましょう。「リレーの発展」では意味をなしませんよね。
desarrollo には「進展」「展開」などの意味があり、ここではその意味で
使われています。
desarrollo=「発展」と覚えている人は多いと思いますし、確かに辞書の第
一義もそうなっているのですが、desarrollo は他にも様々な意味で使われ
ます。このケースに限らず、少しでも「合わないな」「何となくおかしいな」
などと感じたら、ためらわずに辞書を引きましょう。
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『スペイン語実務翻訳講座
〜ちょくねりメソッドで確かな翻訳力をつけよう』
・A4サイズ・約120ページ
・定価4,000円(税込)
・2008年5月14日販売開始
・当面はPDFファイルでのダウンロード発売
■予約特典■
5月13日までに予約していただいた方に限り、定価4,000円(税込)
のところ3,500円にてご提供致します。
ご予約・お申込みはこちらから
→http://pie.vc/textbook/index.html
◆内容のサンプルが上記アドレスでご覧になれます◆
★本教材に関し、わたしたちが尊敬する、フリーランスのスペイン語通訳者
(兼翻訳者)である吉田理加さんから推薦のことばをいただいています。
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+ 経済辞書が出来上がり、少しはのんびりされるのかと思っていま +
+ したが、メルマガ発行、ちょくねりメソッドのテキスト作成と、 +
+ 勢いがとまらない元気なお2人ですね。 +
+ +
+ このテキストの最大の特徴は、「翻訳者の思考の流れが可視化さ +
+ れている」という点にあると思います。皆さんもご存知の通り、 +
+ 翻訳とは、起点言語のテクストの意味を正確に理解し、目標言語 +
+ でそれを忠実に表現しなおす作業です。 +
+ +
+ 「ちょくねりメソッド」は、直訳という作業を通して、起点言語 +
+ の原文としっかり向き合い、原文の意味を正確に理解したうえで、 +
+ それを訳出言語で忠実に表現するために「練る」作業を行なうと +
+ いうものです。 +
+ +
+ このテキストでは、このような作業を実際にどのように行なえば +
+ いいのかについて、手取り足取り詳細に、かつ具体的に説明がな +
+ されています。また、取り上げられている文章はしっかりとした +
+ 厚みのあるものですので、スペイン語の学習教材としても利用価 +
+ 値が高いものです。 +
+ +
+ このテキストを通して、翻訳とは単に言語変換作業ではなく、言 +
+ 語が用いられている社会・環境・人間関係などのコンテクストを +
+ 考慮に入れた社会的再生産のプロセスであるということを体験な +
+ さってみてください。スペイン語の読解力と日本語表現力を向上 +
+ させるヒントが満載の一冊です。(吉田理加) +
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◆編集後記◆
ピーチです。
GWですね。皆様、いかがお過ごしでしょうか?
わたしは昨日、「炎神戦隊ゴーオンジャー」のショーを見て参りました。
出演者たちの、鍛え抜かれ研ぎ澄まされた運動能力に、口をあんぐり開けて
見入ってしまいました。
あれだけの動きが確実にできるようになるには、日々の鍛練と節制が不可欠
なのだろうなあ。
だからといって、この後記のオチとして、
「スペイン語翻訳も同じです。毎日すこしずつでも勉強しましょう」
などと書く気は毛頭ございません。
それを言うべき相手は、誰よりまず自分自身なのですから。
(達人への道は険しいなあ。嗚呼・・・)
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