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2007年7月23日

 スペイン語翻訳者になろう vol.024

 おはようございます。
 今回も重要な内容です。
 さっそく始めましょう!

  ==<もくじ>=======================
    1) Web時代の翻訳術 〜調査力を磨こう〜
    2) アースの気が散る話
  ==============================

  ※スペイン語の表記:このマガジンは比較的上級者を対象としている
   ことから、基本的にアクセントおよびティルデを入れていません。
   ただし動詞など重要な部分については入れることがあります。
   例)bajo → bajo'(動詞、三人称点過去の場合)

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┃1│ Web時代の翻訳術 〜調査力を磨こう〜
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【役職名を調べる(1)】

前回、前々回の「西和辞典は万能ではない」を読んで、
ひょっとすると不安に思った方もおられるでしょうか?
確かに、私たちが朝から晩まで頼りっきりになっている辞書も
時には使えない…なんて言われたら、泣きそうになりますよね。

でも、泣くことはありません。私たち21世紀の実務翻訳者には
「インターネット」という強い味方がいるのです!!

前から言っていますように、信用できないHPもたくさんありますし、
ネットだけでは解決できないこともたくさんあります。でもネットは
使いようによっては、昔では絶対に不可能だった調査をあっという
間に終わらせることができます。

例えば前回の director gerente。辞書には「常務取締役」「専務取締役」
とありますが、

director gerente del Fondo Monetario Internacional, Rodrigo Rato

これはもちろん「常務」でも「専務」でもなく、「国際通貨基金の
ロドリゴ・ラト専務理事」でしたね。検索も簡単でした(vol.22参照)。

企業の役職名で言うと例えば、

 Microsoft nombra Director de Operaciones a Kevin Turner.

という文章をマイクロソフトのHPで見つけました。
director de operaciones は西和辞典でズバリの形では載っていません。

仕方ないので、とりあえずは考えてみます。director はともかく
「長」だから、あとは operacion の意味から考えると…

 1)手術     → 手術主任?
 2)操作     → オペレーション主任?
 3)(軍事)作戦 → 隊長?
 4)(商業)取引 → 営業部長?

頭の中にこれだけの候補が挙がりました。どれもそれっぽいですね。
しかし!

ここでやってはいけないのは、マイクロソフトは「企業」だから
「営業部長」ね、と独り決めしてしまうこと。

世界的大企業のマイクロソフトが「営業部長」や「オペレーション主任」
を任命したと、わざわざ自社のHPで発表するでしょうか?しませんよね。
従って Kevin Turner さんは、相当の高い地位に就いたと想像できます。

ここで Director de Operaciones は上の4つの訳のどれでもないと
判断する、それも「調査能力」の一部であり、西文和訳ではない
「翻訳」への第一歩だと思います。

さて、そこまでわかればあとの調査は簡単です。幸いなことに
Kevin Turner は「ケビン・ターナー」であると容易にわかりますから、

マイクロソフト "ケビン・ターナー"

と日本語 Google で検索してやれば、ターナーさんが

「最高執行責任者(COO,chief operating officer)」

であることがすぐにわかります。そう。 Director de Operaciones
はなんとCOOのことだったのでした。

今回の場合は Turner を読むことができましたので、すぐに
答えにたどり着きましたが、フランス人だのスウェーデン人だので
さっぱり読み方が分からない場合は、検索にもうひとひねり必要です。

それについてはまた次回。

※なお Director de Operaciones は、上記で挙げた4つの意味やCOO,
そしてさらにもっと他の意味で使われることももちろんあります。
念のため。

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┃2│アースの気が散る話
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前回のこのコーナーで、psicologo evolutivo(進化心理学)について
お話ししたところ、スペインの El Mundo 紙の

http://www.elmundo.es/elmundo/2007/05/07/ciencia/1178524552.html

この記事を知人が紹介してくれました。非常に興味深い記事です。
科学欄ではありますが、El Mundo は一般紙ですので、それほど難解
ではありません。どうぞ皆さんも読んでみてください。

記事によると、数・代名詞・色・時制・従属節など、通常の言語には
必ずあるものがなく、子音は8つ、母音は3つだけという言語を話す
人々がアマゾンにいるというのです。

この言語には数そのものだけでなく、数に関する他の語彙、例えば
「すべて」「それぞれ」「大部分」「いくつか」などもないそうです。
ある人が数の概念を教えてみたが、彼らは8ヶ月で覚えるのを
放棄してしまったとあります。

記事の冒頭では、「チョムスキーの普遍的文法理論が治める治世の崩壊」
などと言っていますが、知人とわたしが考えたのはまったく別のこと。

記事を見ていただくとわかりますが、彼らが建てた家の写真が
載っています。

数を数えられないのに、家を建てることができるなんて。木材の
長さを測り、ある長さでそろえて切り、縦と横の長さを比べ…など
という作業を、数はおろか、「多い少ない」という概念さえもなし
にできるとはとても思えません。でもそのことに関する語彙はない
というのです。

紹介してくれた知人は、「知能」とはなんぞや?という非常に重要な
問題提起をしていると思う、と言っていましたが、まったく同感です。

彼らにいわゆる「知能テスト」をしたら低い結果が出るだろうし、
「単純な言語」「数を数えられない」=「知能が低い」という発想を
ついしてしまいそうです。けれど、家を建て服を作る彼らは、果たして
「知能が低い」と言えるのでしょうか?

知人は、きれいな六角形の巣を作るハチの例を挙げて、「言葉を使って
測ることのできるものだけが知能なのか。“人間だけが特別”の西洋的
発想からそろそろ抜け出して、動物の知的能力までひっくるめて考えられる
ような知能の定義を考えてもらいたい」と言っていました。これまた
まったく同感。

テレビなどで、猿や犬に課題を与え、それを彼らが達成した時に
人々が発する「かしこ〜い」とか「頭いい〜」というセリフに、
わたしは少なからず違和感を感じます。

「猿や犬は人間より劣っている」という考えが底にあるからこそ
出てくるセリフなのではないかなあ、と。

「だって劣ってるじゃん!」・・・ほんとうにそう?

本当に猿や犬は人間より劣っているのかしら。人間の基準で
見ているから劣っているように見えるだけなのではないかなあ。
「人間なら絶対にうまくできる課題」を与えているから、それを
よちよちこなす彼らが劣って見えるだけなのでないかしら。

人間には動物のようなすごい身体能力はないけれど、それを補う
ことができる道具を作れるのだから、この世で最も優れているのだ…と
言われればそれまでだけれど、だからといって、それが他の動物を
見下してもいい理由になるのかしら。そもそも生命に優劣をつける
ことなんでできるのかしら、優劣をつける意味があるのかしら、
なぜ人間は生命に優劣をつけたがるのかしら…と、終わりのない
ループ思考に陥るのでした。

◆編集後記◆
アースです。
きょうの気が散る話ですが、別に「野に帰れ」とか、文明は罪悪だ
とか、そういうことを言っているのではありませんし、新興宗教を
起こそうとしているのでもありませんので、念のため(笑)。
そう思っていたら翻訳なぞしてません。新興宗教ほど儲からないし〜。
文明はもっともっと発達すべし! そして私を月まで連れて行って!

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