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2007年7月20日

 スペイン語翻訳者になろう vol.023

 おはようございます。
 またもや大きな災害が起きてしまいました…。
 でもインタビューに答えている70代、80代の地震被災者の方の
 気丈な様子には元気づけられます。気骨が違う、気骨が。
 我々若い(?)世代も、豆腐のような根性をたたき直し、
 彼らを見習っていきましょう!

 きょうも前回に引き続き、とっても大事なお話第2弾です。

  ==<もくじ>=======================
    1) 西和辞典は「万能選手」にあらず その2
    2) ピーチのメタボリック雑記
  ==============================

  ※スペイン語の表記:このマガジンは比較的上級者を対象としている
   ことから、基本的にアクセントおよびティルデを入れていません。
   ただし動詞など重要な部分については入れることがあります。
   例)bajo → bajo'(動詞、三人称点過去の場合)

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┃1│ 西和辞典は「万能選手」にあらず その2
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さて、前回は director gerente を例に挙げ、辞書に「常務取締役」
「専務取締役」と載っているからといって、すべてそう訳せるわけ
ではないことをお話ししました。

 「でもさ〜。じゃあ辞書にはウソが書いてあるわけ?」

の答えはイエスでありノーでもあると、禅問答のようなことを言いました。
ここでまた別の例を見て、その答えの真意を探ってみましょう。

英語では wear の一言で済むところ、日本語では着る、かぶる、はめる、
つける、はく・・・と体の場所によってすべて言い分けるので、外国人が
覚えるときに大変だという話は有名ですね。役職名もそれと似たところが
あります。

先日出てきた presidente ひとつ取っても、大統領制の国なら「大統領」、
議院内閣制の国なら「首相」、会議なら「議長」、商工会議所なら「会頭」、
銀行なら「頭取」「総裁」などなど、勘弁してくれろ。と言いたくなります。

ここで言いたいのは、presidente や director gerente の訳語として
これまでに挙げた日本語を覚えろということではなく、スペイン語(外国語)
と日本語の単語は、一対一で対応しているのでは決してない、ということ。
これを常に頭に入れておいてほしいのです。

そんなこと分かってるわよ、という人がいるかもしれません。が、私自身も
含め、これを案外忘れがち。その文章の文脈や背景をいっさい考えず、
辞書に載っている語義にすぐに飛びつき、あとで読み返すとトンチンカンな
訳になっていた…ということが一再ならずあります。

ではどうするか。

理想としては、まずはその単語の持つそもそもの意味(エッセンス)を
しっかりと把握すること。それには西西辞典がお勧めです。

例えばさきほどの presidente を Real Academia Espanola で引いて
みましょう。名詞としては、以下が載っていました。

 1)Persona que preside.
 2)Cabeza o superior de un gobierno, consejo, tribunal, junta,
   sociedad, etc.
 3)En los regimenes republicanos, jefe del Estado normalmente
   elegido por un plazo fijo.

3つありますが、まさに presidente の原義と言えるのは、1番の
Persona que preside(取り仕切る人)だけだと思います。2番は
「gobierno, consejo, tribunal, junta, sociedad の長もしくは上位の人」、
3番は「共和制下で、通常はある一定期間について選ばれた国家の長」で、
いずれも要するに「取り仕切る人」ということですよね。

ここで気がつかれた人もいるでしょう。どの西和辞典にも「取り仕切る人」
というそもそもの「原義」は載っていません。そう、西和辞典には
「訳の候補」が載せてあるだけなのです。しかもほんの一部だけ。

例えば presidente の日本語訳として使える言葉は、上で挙げた語義も
含め、おそらく膨大な数になるでしょう。

それに、この話は役職名に限ったことではありません。名詞だけとも
限りません。動詞でも副詞でも形容詞でも、すべて同じこと。それらを
いちいち載せていたら、辞書の重さだけで床に穴が開いてしまいます。

私たちが実際に辞書を書く中で強く感じたことは、
 「とても全部は載せきれない!」
という苛立ちでした。経済用語という、ほぼ「一対一」の対応が
実現できそうな分野でさえ、山のようにある語義の候補の中から、
泣く泣く2つ3つを選び出さざるをえず、少なからず残念に思った
ものです。

ここまできて、ようやく今回のタイトルの意味を悟っていただけた
でしょうか。西和辞典は骨惜しみせず引くべきですし、隅から隅まで
目を通すべきではあるけれども、だからといって「万能」ではない、
ということです。

西和辞典(「○和辞典」すべてですね)の長所と短所を知って、
うまく使いこなしましょう!

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┃2│ピーチのメタボリック雑記
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「あのひとはいいなぁ。○○があって。」
とは、ほとんど誰でも(たまには)思うことですね。

人間、とかく自分にないものに目がいきがちです。
ひとのもっているもの(車や家のような具体的なモノから、能力や人格のよう
な視覚化できないものまで)をすごいなあと思い、「自分にはない・・」とた
め息をつく。

でもそうでしょうか?
自分の「手持」を総点検してみれば、たとえラインナップは豪華でなくたっ
て、実にいろいろなものを持っていることに気づくはずです。

それに、「自分にはない・・」とおもっているもの、それは自分にとって本当
に必要なものでしょうか?
あったら素敵だけれど、自分の生活や人生にはとくに要らないものかもしれま
せん。

もしもどうしても必要なものだったら、その欠如を少しずつでも埋めていけば
いいだけです。

たとえば、翻訳者には欠かせない「国語力」、これが足りないと思えば、名文
家の誰それさんをうらやむ時間を、そのひとの書いた文章を何度も書き写すこ
とに使えばいいのです(余談ですが、意識を集中させて行う書き写し・・・こ
れは文章力向上に絶大な威力を発揮します。)

「どうしてもほしい」「是が非でも必要」なわけではないものについて、「自
分にはない〜」と身を捩じるのをやめるだけでも、ストレスは相当減るかもし
れません。

そして自分の「手持」を知り、感謝し、大切に使う・・これができれば「手持
さん」は沢山の宿主孝行をしてくれるはずです。

「手持さん」と仲良くし、「なくてもいいもの」とは距離を置いて付き合お
う。

(・・と、今回はほとんど自分への手紙のような雑記でした^^;)

◆編集後記◆
先日のこの欄を読んで、わたしのボケぶりを心配してくださる声があちらこち
らから聞こえてきました(皆さん、ありがとうございます)。震災に遭われた
方々のことを思えば(明日はわれらが身ですが)、いつまでもぼぅっと生きて
いる場合ではないですね。
ところで、きょう、コーヒーショップでつわものを見ました。
テーブルに突っ伏してぐっすり眠っている、ポロシャツ姿のおじさん(勤め人
ではない様子)。
まるで、学生時代の自分を思い出すような大胆な寝姿です。
あまりに気持ちよさそうに眠っているので、隣の席からついじっと観察してし
まいました。
「このひと、いつ起きるんだろう?このまま夜まで寝てしまうのでは?」
と勝手に心配していると、いきなり「ジリジリジリジリ・・・」とタイマー音
が。
その眠っていたおじさんはむくっと起き上がると、どこかからキッチンタイ
マー(!)を取り出して音を止め、しゃきっと立ち上がって、颯爽と店を出て
行きました。
その背筋の伸びた後ろ姿に見惚れながら、
「このひとくらいの潔さで生きていきたいものだ・・」
と独り思うのでした。

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