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2007年7月16日

 スペイン語翻訳者になろう vol.022

 おはようございます。
 台風の話題は編集後記で触れていますのでここでは割愛しますが、皆さんの
 ご無事を祈っています。

 きょうは祝日。
 勤め人には嬉しい3連休も、しゅふ(主婦&主夫)や自由業者にとっては、
 家族がいる分、普段より疲れるときかもしれません。
 皆々様、どうぞごゆっくりお休み下さい。

 だからといって、「じゃ、メルマガ読むのもや〜めた」はだめです^^;)
 今日はとっても大事なテーマですので、普段は斜め読みの方も、今回と次回
 だけ(?)は目をしっかり開いてお読み下さいませ。

 では始めます。

  ==<もくじ>=======================
    1) 西和辞典は「万能選手」にあらず その1
    2) アースの気が散る話
  ==============================

  ※スペイン語の表記:このマガジンは比較的上級者を対象としている
   ことから、基本的にアクセントおよびティルデを入れていません。
   ただし動詞など重要な部分については入れることがあります。
   例)bajo → bajo'(動詞、三人称点過去の場合)

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┃1│ 西和辞典は「万能選手」にあらず その1
┗━┷━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

辞書をとにかく引きなさい!
知っている単語でも何度でも引いて!
辞書を引く時間と労力を惜しむな!

……はい、耳にタコができてますよね。確かにこれらのことを
実践しなければ、立派な翻訳者さんにはなれません。また、立派な
翻訳者さんは、必ずこれらを実践しています(耳いたい)。

しかし、西文和訳のレベルを過ぎ、仕事として(人に見せるため)の
翻訳が視野に入ってきたとき、「西和辞典に頼り過ぎる」のも
良くないことがあります。

具体的な文章を例に出して実際に翻訳してみないと、なかなか説明
しにくいのですが、ここでは紙面の都合上、「企業の役職名」を例として
使うことにします。(あくまでも「例」であって、企業の役職名はこう訳し
ましょうという話ではありません。念のため)

例えば、director gerente を西和辞典で見ると、「常務取締役」や
「専務取締役」と載っていることがあります。

企業の役職名というと、ふつう頭に浮かぶのは

  会長 社長 (代表)取締役 常務(取締役) 専務(取締役)…

ですから、辞書を引いて、「あった。やったね!」・・・と思うかも
しれません。でもそこで止まってしまうと、「翻訳」ではなくて
「西文和訳」になってしまいます。

ここで認識しておきたいことは、これらの日本語はあくまでも日本の
会社組織における役職名であるということ。

例えば上記のうち、日本の「会社法」で設置が義務づけられているのは
「(代表)取締役」だけであるということをご存知でしょうか。その他は、
その会社の定款などで独自に(好きに)決めている地位であるわけです。
「社長」でさえも。

「専務」が社長を補佐し、「常務」は会社の常務を執行する者、などと
いうことは、日本の会社ならばほぼ同じ「常識」と言ってもいいでしょう。
つまり日本国内で「常務」と言えば、法律で定められているわけではない
けれど、だいたい同じ内容の職務を遂行する人であるということですね。

しかしそれらと完全に同一の職務内容を持つ役職が、スペイン語圏の会社
にも存在するのでしょうか?日本の会社の常識が、世界の会社の常識
なのでしょうか?

director gerente と出てきたら、なんでもいいから「常務」や「専務」
としてしまっていいのでしょうか? その director gerente さんは、
本当に株式会社の常務や専務の役目を果たしているでしょうか?

極端な例ですが、

director gerente del Fondo Monetario Internacional, Rodrigo Rato

とあったらどうしましょうか。
 「国際通貨基金のロドリゴ・ラト常務取締役」
でいいのでしょうか。まさか!

"ロドリゴ・ラト" IMF

で Google 検索してみてください。すぐに、日本語では「専務理事」と
訳されていることがわかるはずです。

IMFは国際機関ですから、おかしいことにすぐ気がつきます。
しかし会社の役職名ならば何も考えずにうっかり「常務取締役」などと
してしまいそうです。

実際、そのように訳しても良い場合もあるでしょう。その会社の director
gerente の地位が、日本の「常務取締役」と同等の職務内容であるなら、
そう訳しても問題ないかもしれません。

でも、これが例えば工場の director gerente だったら?NPOの director
gerente だったら?どれも「専務取締役」「常務取締役」ではおかしいのは
明らかですよね。

 「でもさ〜。じゃあ辞書にはウソが書いてあるわけ?」

そうですね、答えはイエスでありノーでもあります。

その謎解きは…次回にさせていただきます。お楽しみに!

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┃2│アースの気が散る話
┗━┷━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ピーチとちがい、いつもアホなことばかり書いているので、
たまにはまともなことを書きます。気は散ってますが。

スペインの El Pais 紙を読んでいたら、psicologo evolutivo という
言葉が出てきました。

psicologo evolutivo を普通に訳すと「進化心理学者」?
「進化心理学」なんて学問、あったっけ。
というわけで、さっそく調べてみました。

すると、ウィキペディアにずばりの項目があるではないですか。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%80%B2%E5%8C%96%E5%BF%83%E7%90%86%E5%AD%A6

ほおほお。なんつーおもしろそうな。
あ、参考文献にある「スティーブン・ピンカー」って聞き覚えあり…。

そうそう、『言語を生みだす本能』(日本放送出版協会)を書いた人です。
上下巻ありますが、上巻が特におもしろいです。言語に関わる者として、
非常に興味深い一冊。みなさんもぜひ読んでみてください。

言語の獲得は人間の本能だっ!というのがこの本の主張なのですが
(ちょっと乱暴かな)、言語関係の本にありがちな「小難しさ」
がなく、非常に入っていきやすい内容・構成になっています。

著者自身が冒頭で、著者も深く影響を受けているチョムスキーの
言語能力についての理論展開は「単語と文構造の学問的分析に基づいて
おり、形式主義の難解な表現が多用される」けれども、本書では
「多方面からの現実に即した証明」を行う、と述べています。要するに
実例がたくさん取り上げてあるということですね。

構成のうまさと、それに翻訳も素晴らしく、最後までほぼ退屈すること
なく読み通すことができました。こんなの訳せたらおもしろいだろうなあ。
(本能で訳したい・・・)

また読もうっと。

そんなこんなで、ウィキペディアの「進化心理学」のページの一番下で
「ちゃんと勉強したい人向け」とあった
 『進化と人間行動』(東京大学出版会)
という本、ついうっかり買ってしまいました。

まだ第二章まで読んだだけですが、すごくわかりやすく書かれています。
まず最初に遺伝子や進化に関する一般的な誤解についての説明があり、
今までなんとなくモヤモヤ感の晴れなかったわたしとしては溜飲が下がり
ました。続きも楽しみです。

興味のある方は…少ないかもしれませんが、これもお勧めの一冊です。

◆編集後記◆
アースです。
台風で被害が出ていますけれど、本メルマガの読者の皆様のお宅は
大丈夫でしたでしょうか?
我が家も何年か前の大雨のときに、床下浸水したことがあります。
確かにすごい降りではあったのですが、まさか洪水になるとは思っても
いませんでした。隣の人がやってきて「ちょっと!外すごいよ!!」と
言ってくれなければ、しばらく気がつかなかったかも。それくらい
あっというまに水位が上がっていきました。
お向かいとの間の道路はもう濁流。「足を踏み入れたら、あっという間に
川に流されるだろうな…」とぼんやり考えたことを覚えています。
もうその頃には避難どころではなくて、一階のものを二階に上げようか
どうしようか迷っている間に、徐々に水位が下がっていきました。
原因は、すぐそばで急カーブしている川から水があふれ出したという
ことでした。このあたりは雪が降るので、ふつうのお宅よりは床面が高く
なっています。そのせいで床下浸水程度ですんだのでしょう。
後始末は大変でしたが、それでも「床下」で済んだことに感謝、でした。
最近は本当に、日本全国どこにいても安全なところなどないのではないか
と思えるほど自然災害が多いですよね。「災害は忘れたころにやってくる」
という古い諺をかみしめたいものです。

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